HOME>ニュース>総主事通信07年度③今月のコメント

ニュース

総主事通信07年度③今月のコメント

2007.07.02

シェア ツイート

●沖縄~カンボジア~宇宙基本法
6月23日は沖縄慰霊の日。犠牲者・遺族そして関係者の方々にとっては、それは「かつてのこと」ではなく、まさに「昨日のこと」。悲惨な戦争経験者にとっては、「時計の針は『瞬間冷凍』され止まったまま」でしょう。
沖縄の「平和の礎(いしじ)」に、今年また新たに名前が追加されました。沖縄出身のその家族は台湾で戦死。担任の先生や教え子が、その子を62年かけて探し当て、ようやく名が刻まれたのでした。62年を経て証しされた「生と死」。沖縄だけではなく、世界各地で悼まれ弔われることのない数多くの「無名の死」があるでしょう。私たちは、その「無言の叫び」に耳を傾けねばなりません。
6月14日(土)付の新聞に、「ポルポト元幹部起訴 来春にもー特別法廷 時間との闘い」という記事がありました。75年―79年の間、カンボジアが「キリングフィールド」(国民約170万人が虐殺され、消された)と化したその暗黒の歴史はいまだ裁かれぬまま、です。「かつて」の戦争は、まだ終わりを告げていません。
6月23日(土)付の新聞の社説に「現実見据えた宇宙基本法に」との記事がありました。同基本法は、宇宙開発と平和利用のため、宇宙レベルでの安全保障と関連産業の振興のため、自・公両党が議員立法を目指して衆院に提出した、というもの。まさに「遥か彼方のお話」です。願わくば、宇宙船地球号(古い表現ですが)のあちこちで発せられるSOSに目を向け、一人ひとりの尊い命をどう守り支えるのか、ということにも心を注ぐ社会であってほしい、と切に願います。

●子どもたちの戦争(著者:マリア・オーセイミ・訳:落合惠子 講談社) 第1版1997年
「世界じゅうのあまりにも多くの場所で、子どもたちは自らはまったく責任のない戦争のために、その人生をだいなしにされ、つらい日々を送っている。死と恐怖と破壊の中で、子どもは、生きるために生きている。・・・子どもたちの夢は、悲しいほどにシンプルだ。安心して通りで遊び、殺される不安から解放されて学校に通い、おなかがすいたら食事をとり、家庭があり、家族がそばにいてくれる日が再び訪れる、という夢である。・・・」(「子どもたちの戦争」から)
 著者であるマリア・オーセイミは、レバノン・エルサルバドル・モザンビーク・ボスニアヘルツエゴビナ・ワシントンDCなど数多くの戦場を取材し、子どもたちがさらされている危機を目撃しました。
「子どもたちの戦争」原書のカバーは言います。「しかし、なによりも衝撃的なのは・・・彼女がいままでに取材した数多くの戦争の中で最悪なのが、アメリカの首都で行われている『宣戦布告なしの戦争』だという点にあるだろう」。そして訳者の落合さんは言います。「(宣戦布告なしの戦争は)日本の子どもたちのいま。それぞれがよって立つ地面を深く掘り下げていくと、地下水脈でつながっているような・・・。そんな不安がある」と。
途上国のみならず、先進国の都市のスラムにも、私たちの身の回りにも存在する「子どもたちの戦争」にも目を向けなければならないでしょう。人と人のつながりの断裂という「非平和」です。
子どもたちは、それぞれの「今」を生きています。

●国際協力NGOセンター(JANIC)理事長交代
 JANIC通常総会が6月19日(火)に終了し、理事長の船戸良隆さん(元JOCS総主事・ACEF専務理事)が退任され、新理事長に大橋正明さん(シャプラニール=国際協力市民の会 代表理事)が就任されました。大橋さん及び事務局長 下澤嶽さん(昨年就任)もJOCSと縁の深い方々。JANICは08年度に20周年を向かえ、日本で開催されるG8に力を結集しつつ、様々なチャレンジを行いながら今年度の歩みを進めています。日本のNGO界の牽引役としてのJANICの取り組みに注目していきたいと思います。
船戸さんは退任のご挨拶で、かく語られました。
「初代はアジア学院の高見敏弘先生(牧師)、2代目はSVAの有馬実成さん(僧侶・故人)、そして私(牧師)、と3代に亘り宗教者が、理事長として支えてきた。しかし今一つのピリオドを打ち、これからは非宗教者が、国際協力とNGOをリードしていくことになる。時代の要請に応じてより専門性が問われる情勢にあり、これは自然な流れではあるが、しかし宗教者が時代を切り開いてきたその情熱を是非失わず、受け継いでいって頂きたい」
これは、私たちキリスト教使命を実践するJOCSそのものにも向けられた言葉でもあると受け止めました。時代と共に変わる(変える)べきこと、しかし変えてはならぬものを見極め、キリスト教諸団体が受けている様々なチャレンジを乗り越えていく「人(リーダーシップ)」の問題を見つめ、そのありようを考えていきたいと思います。