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総主事通信07年度⑦今月のコメント

2007.11.02

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5.今月のコメント

●2008年度ノーベル医学生理学賞 マリオ・カペッキ氏(米ユタ大学教授)
 「カペッキ教授の祖国はイタリア。母子家庭であったが、第二次大戦下、4歳の時に反ファシズムの活動家であった母は政治犯として投獄。4年間路上で寝起きしたり、盗みを働いたりして孤独に生き延びた。終戦から1年後に母親が捜し出したときには、教授は栄養失調で病院に収容されていた。その後、母と子で渡米し、英語もわからないまま小3で初めて学校に就学するというまさに波乱万丈の人生だったという。」(朝日新聞より)
 上記にあるように、カペッキ教授の人生は、いわゆるストリートチルドレンの群れの中で、生きるため孤独とも闘う苦悩の連続だったでしょう。紙面には「受賞業績を上げるまでにも不遇な時代を過ごし、着想から14年かけて成功させた」との記述もあります。70歳になった今、その天賦の才能により、ノーベル賞受賞という快挙によって、極めて稀な「逆転サヨナラ満塁ホームランの人生」となりました。しかし、世界各地の圧倒的多数の子どもたちは、生きる権利を奪われ、無視され、排除されています。カペッキ教授を「ただ一つの成功物語」として片付けず、ストリートチルドレンを生み出さない世界をつくるため、私たちは一体何ができるでしょうか?

●世界子供白書2007「女性と子ども―ジェンダーの平等がもたらす二重の恩恵」
 「ジェンダーの平等を実現するという国際社会の決意にも関わらず、差別、ディスエンパワーメント(力を奪われ、または発揮できない状態に置かれること)、貧困のために、世界中の何百万人もの女性や女子が困難な生活を余儀なくされている。―中略―女性と女子は、人口比に照らしてはるかに大きな規模でエイズの影響を受けている。児童婚を強要される女子も多く、15歳になる前に結婚させられる女子もいる。多くの国々では、妊産婦死亡率が依然として弁解の余地がないほど高い。またほとんどの場所で、女性は男性と同じ仕事をしながら男性より少ない報酬しか得ていない。さらには、世界中で何百万人もの女性と女子が身体的・性的暴力に苦しみ、公正な裁判や保護もほとんど受け入れられない状態に置かれている。」
アン・M・ベネマン ユニセフ事務局長(世界子供白書2007より)

●女性と子ども
 「女子差別撤廃条約(1979年に採択)が受け入れられ、批准されるまでの道のりは、子どもの権利条約(1989年に採択:193の国と地域が締結)よりも苦難の多いものであった。子どもに権利があるという考え方は容易に受け入れる国の中にも、女性にも権利があることはそれほど認めたがらない国がある。女子差別撤廃条約の締結国数は184カ国だが、特定の条項に留保をつけている国が多い。実際、女子差別撤廃条約は国連の条約の中でも留保数が一番多いもののひとつとなっており、女性の権利に対する抵抗が世界的であることを裏付けている。」(世界子供白書2007より)

ユニセフがその白書で、子どもだけではなく、「女性と子ども―ジェンダーの平等がもたらす二重の恩恵」を宣言したことに注目したいと思います。
  かく言う日本はどうでしょう?G7の一員であるこの日本でさえ「ジェンダー」という言葉や「女性の権利」はいまだ受け入れられていません。ちなみに、日本が子どもの権利条約を批准したのは1994年、まだ13年しかたっていません。「子どもにふさわしい世界を」ではなく、「女性と子どもにふさわしい世界」を目指すことは、「私たちすべてにふさわしい世界」を目指すことにほかなりません。
JOCSは、「今後5カ年の方向性」で、まず「女性と子ども」を掲げました。カンボジアワーカーの諏訪さんは、08年2月中旬に2期目の活動を始める予定です。現地では日本のカトリック礼拝会のシスターたちが取り組む女子のシェルター事業(人身売買と性的搾取被害を受けたあと保護された10代の女子に対する支援)でのミッションです。諏訪ワーカーは、そうした「女性と子ども」へのケアに向けて、現在日本国内でさまざまな講座を受け、女性のためのシェルターでの研修を続けています。祈り支えたいと思います。