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07年度総主事通信⑨

2008.01.08

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●2007年を振り返って(新規ワーカー・短期ワーカーのこと)

 最初に山内章子ワーカーについて。障がいのある方々への働きです。JOCSはその活動推進のため、全国障害分野NGO連絡会(JANNET)に再加盟しました。障がい者の置かれている背景と多様性、世界の他の地域に比べ、モデルとなっているアジアでの取り組みの重要性などを学ぶ良い機会を与えられています。
 次に青木盛ワーカー。活動する聖ラファエル病院のあるパキスタンは、多発するテロ事件は止まず、まさに混沌とした状況が続いています。安全最優先のため青木ワーカーの行動制約はやむをえないとしても、JOCSが本来の活動を行っていくためには「平和が欠かせない」ことであることを痛感します。
 第3に清水範子ワーカーの任地について。周辺諸国は紛争が絶えず、アフリカの最貧国の一つでありながらも、難民庇護国として多くの難民を受け入れてきたタンザニア。年明けには隣国ケニアの暴動のニュースが飛び込んできました。私たちが関わりを持つ途上国では平和の問題が先ずあることを再確認した次第です。タンザニアでの母子保健活動は、昨年末の全国の教会学校のクリスマス献金の使途先の一つに挙げて頂きました。清水さんの働きを通して、幼子やお母さんたちが生きている状況や世界が伝わることを祈ってやみません。
 短期ワーカー(外科医)2名の派遣(石田龍吉さんーネパール、宮尾さんータンザニア)の実現も今年のトピックの一つです。医療の恵まれない地域のニーズは「アジアの呼び声」。これからも向き合っていきます。

●スモールワールド現象(Small World Phenomenon, Small World Effect)

 この仮説は、社会心理学者スタンレー・ミルグラム(イェール大学)が1967年に行ったスモールワールド実験で検証され、その後「六次の隔たり」という有名なフレーズが生まれました。「六次の隔たり(Six Degrees of Separations)」とは、人は自分の知り合いを6人以上介すと世界中の人々と間接的な知り合いになれる、という仮説です。まさに「世界は狭い」現象の証左に他なりません。
 私たちは様々なつながりの中で生きています。でもなかなかそれが実感できない。時に「一人ぼっち」で孤立孤独の淵に立っている感覚と無力感にさいなまれます。自ら「外への窓を閉ざしている」自分がいたりします。でも、一人の人間の情熱や可能性が人々の思いや力を呼び込んで、大きなうねりとなり、世界を変えていく奇跡が起こりうることも知っています。
 元韓国大統領の金大中氏が来日した際、こう語りました。「奇跡は奇跡的には起こらない」と。地道であっても私の中にあるスモールワールドが、それぞれのスモールワールドと接点を持ち、ネットワークし、何かを変えていくと信じたいと思います。

●“人間になるためには、お互いが必要なのです”

 「人々の人間性を無視することは、自分たちの人間性を無視することなのです。抑圧することは、たとえそれ以上ではないとしても、被抑圧者と同じぐらい抑圧者の人間性を損なうのです。人間になるために、真に自由になるためには、お互いが必要なのです。私たちは、人間の仲間、共同体、平和の中でだけ人間となれるのです。」(「南アフリカに自由をー荒れ野に叫ぶ声」デズモンド・ツツ著:サイマル出版、1984年ノーベル平和賞授賞式の記念講演から)
 ツツ主教は南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)に対し、非暴力解放闘争を行った黒人指導者です。しばしばあのマーティン・ルーサーキング牧師にたとえられます。自身黒人居留区(ソウェト)に暮らし、幼い頃から虐げられ、医師を目指したが奨学金が得られず断念。その後教育者を経て聖職者となります。「私たちは黒人の解放に深く関わっている。なぜなら、それはとりもなおさず、白人の解放につながるからだ。」「希望は人間の胸に永遠に宿っている。」との言葉も残されました。
 決して希望を捨てず、和解による平和を目指したツツ主教です。
 「お互いが必要な存在」。これほど重く説得力に満ちた言葉はありません。私たちはそれぞれの場で、世界のどこかにいる「見えぬ仲間」とつながり、そして主イエスを通して「見えぬ神」ともつながっています。お互いに必要な存在として関わり合い、共に生きる世界のため、決して無力ではなく微力であっても力を合わせていくのだ、そうすれば必ずよりよい世界はやってくる、との声が聞こえます。