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09年度総主事通信⑩

2010.02.05

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今月のコメント

●震災に思うこと、そして故草地賢一PHD協会総主事の言葉/“From Charity to Justice”

 ハイチ大地震は、阪神・淡路大震災から15年となる1.17直前の1月12日に発生しました。被災者総計300万人は、人口900万人の国の実に3人に1人です。主要官公庁・病院・学校も約9割が倒壊したとのことです。Newsweekは、「史上最悪の人道危機~神と運命に見捨てられた国」(同2010.2.3)と報じました。「地震の前からハイチは破綻国家だったが、今は国家ですらない」(同)中、必死で生きる人々のために心から祈ります。
 1995年1月17日、午前5時46分。たかだか20秒ほどの大地震が永遠のように感じた日のことが、つい昨日のようです。体内の時計は、その時刻で「瞬間冷凍」されたままです。壊滅的なダメージを受けた町並みは目に焼きついています。「6,434名+3名」、この「3名」とは15年たった今もまだ行方不明の方です。世界では、数すら特定できない人々の、尊いしかし名もない命が災害や紛争によって奪われています。自然災害の脅威のみならず、多くは「人災」です。防げたはずの死の数々、傷つかずに済んだはずの魂に痛みを覚え、自ら出口の見えぬ暗闇のトンネルにいたことを思い起こしました。災害の教訓が日々生かされることを切望します。
 さて、ハイチ大地震の前日、PHD協会(岩村元ワーカーが帰国後設立)元総主事・草地賢一氏の召天10年記念の会に出席しました。故草地氏は1.17以降、市民による海外の災害支援にも大きな足跡を残されました。氏が生前語っていた言葉に、“From Charity to Justice(慈善から正義へ)”があります。ルーツは1985年のドイツでの国際会議で採択されたケルン憲章のようですが、「先進国から開発途上国への施しとしての国際協力ではなく、双方で学び合うことを通じて公正な地球社会をつくっていくこと」を指しています。「多文化共生」と「公正な地球社会」は両輪です。それはNGOの理念と使命を鋭く指摘した言葉として、今も生きています。

●「ウガンダに咲く花」(鈴木文治 編著・コイノニア社)※キリスト教書店で取り扱っています。

 「あなたと出会って、私はあなたと出会うために、そして神様を信じるために、生まれてきたことを知りました。本当にありがとう。」
 
 これは、12歳でエイズのために天に召されたウガンダの少女・ナマトブさん(仮名)の最後の手紙です。この本は、激しい内戦や病気によって両親を失った子ども達と川崎・桜本教会のCSの子どもたちの文通の物語です。ナマトブさんは、ルウェロ(北川元ワーカーが従事したKiwoko病院のある地域)にある孤児院で生活していました。私も昨年の10月にルウェロとKiwoko病院を訪れ、戦争の深い傷跡とエイズの問題に衝撃を受けました。そして偶然帰国後にこの本のことを知ったのでした。「ナマトブ」とは、ウガンダに咲く花の名前です。
 文通のきっかけはアジア学院のウガンダ人留学生が桜本教会に訪れたことでした。同教会はどんな人も排除しない、ホームレスの人・障がいを持つ人・在日外国人の人たちと共に礼拝をする教会です。その教会のCSのメンバーである千佳さん(仮名:小5)とナマトブさんは、地球の反対側に生きる見知らぬ子ども同士でありながら、手紙を通じて、心を通わせ、かけがえのない絆で結ばれていきました。エイズを病みながらも「自分にはイエス様がいて、未来に希望を持っている」というナマトブさん、そのことに励まされた千佳さん。
 戦争・貧困・エイズのことを知り、身近な人と共に生きることの大切さと難しさに悩み、親友との死別に神様に疑問を投げかけつつも「平和の架け橋」として生きる子どもたちの姿に強く感動し、涙が止まりませんでした。

●「THIS DAY OF CHANGE~希望の一日」(by クーリエ・ジャポン:講談社)

 丁度1年前のことですが、写真展&イベント「希望の一日」に参加しました。「希望の一日」とは、オバマ大統領就任の2009年1月20日、世界79カ国・132人の写真家たちが「希望」をテーマに撮影した写真企画です。
 写真家の一人J.W.ディラーノ氏は、オバマ誕生の1月20日に、ラッシュアワー時の新宿駅と静寂の高尾山という全く異なるコントラストを写し撮りました。ディラーノ氏の「被写体を移す時は、自分という主体は出来るだけ透明な存在になりたい」、「壁に止まったハエのように撮る」、「被写体との信頼関係を築きながら、自分を徐々に消していく」という言葉が印象に残っています。被写体(主体)を際立たせるために、写真家は「無」になる。もちろん決定的な瞬間を撮るまでには、被写体と写し手の間に心と心がつながる対話があるのだと思います。
 ふと、その話とJOCSの働きとが重なりました。JOCSの活動地にあって、草の根の人々が主体であり、活動の担い手であるワーカーやスタッフはそれを支える側、そして私たちはそれを支える黒子役。「自分を消していく」ということの意味を今一度味わいました。あの“Go to the People”の詩のように、ある活動を終えた時、最後は自分ではなく、「彼ら自身がやったのだ!」という歓喜の瞬間に至る。そのことが結びついたのでした。
 「希望の一日」の写真は、一枚一枚すべてが心揺さぶるものでした。それぞれが見事にその日の“世界の瞬間・命と生き様”を語っていました。そして写真展で見つけ、最も心動かされた言葉が、次のメッセージです。

 “Be the Change you want to see in the world/見たいと思う世界の変化に、あなた自身がなりなさい”-マハトマ・ガンジー-