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10年度総主事通信②

2010.06.04

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今月のコメント

●「スラムドッグ$ミニオネア」(イギリス映画:2008)/「ぼくと1ルピーの神様」

 この映画は、第81回アカデミー賞で作品賞はじめ8部門を受賞しました。舞台となっているインド・ムンバイは2度訪れたことがあります。人口1800万人のインド第2の商業都市。街には世界最大規模のスラムと性産業地域が根を張って生きいています。沸騰する新興国の象徴のような都市の光と闇。巨大なスラム、そして「レッドライトゾーン」に足を運んだ時、激しい嫌悪感に襲われたのを覚えています。それは、私自身を含む人間の愚かさと醜さの縮図だったからです。これは私達が生み出している所だと。
 映画の背景には、格差社会、幼児虐待、闇ビジネス、宗教暴動、急激な近代化といったインドの「今」が浮き彫りにされています。インドの都市部は、国内に留まらずネパールをはじめ南アジアの人身売買との関係も深いようです。他国の貧困とのつながりを想像すると暗澹とさせられます。もし、例えばネパールの「Peace Loving Children Homeのメンバーがその犠牲になっていたら?」と考えると、背筋が凍ります。

 この映画には、確かに絶望と悲惨が描かれています。しかし同時に優れた物語性にも驚かされます。何より主人公である「スラムドッグ」と呼ばれる子ども達が決してあきらめず、夢を捨てず、暴力によって虐げられながらも、愛を貫く。そのことに、私達は教えられ、勇気と力を与えられます。
 原作者は、インド人外交官のヴィカス・スワラップ氏。そして原題は、「ぼくと1ルピーの神様」です。
 今、JOCSは、50周年記念の絵本を製作中です。その題名は「1ルピーの贈り物」です。インドではなく、ネパールの物語(by細井ワーカー)ですが。私達は子ども達から大切な、大切な贈り物を頂いています。

●ネルソン・マンデラ~和解と自由、そして”Ubuntu”

 サッカーW杯が6月11日から、アフリカ大陸初の南アフリカ共和国で開催されます。
「抑圧された人々が解放されるのと同じように、抑圧する側も解放されなくてはいけない。他人の自由を奪うものは、憎しみの囚人であり、偏見と小心さの檻に閉じ込められている。私がもし誰かの自由を奪ったとしたら、自分の自由が奪われた時と同じように、私は真から自由ではないのだ。抑圧される側も抑圧する側も、人間性を奪われている点では変わりない。・・・自由になるということは、自分の自由を尊重し、自分の鎖をはずすだけではなく、他人の自由を尊重し、支えるような生き方をするということでもある。」(ネルソン・マンデラ自伝より)

「私はかつて『46664』という囚人番号で呼ばれていた。私は単にナンバー(番号)だった」と、マンデラ氏は南アでのエイズ撲滅コンサート「46664」(2003)で語りました。人ではなく、番号に過ぎなかった「命」。
 マンデラ氏は、暗黒のアパルトヘイトの国に和解と自由をもたらし、多様性を尊重し色々な肌の色の人が共生する「虹の国(レインボー・ネーション)」へと導きました。27年間、9855日もの投獄時代を不屈の精神で生き抜いたマンデラ氏。そのヒーローの理解者であった故郷の村のコーサ語を話す看守、偉人を支えた無名の人の存在が、映画「マンデラの名もなき看守」(2008)で描かれています。 
 南アと言えば、もう一つ思い出します。映画「遠い夜明け」(Cry Freedom:1987年)です。当時、マンデラ氏は獄中でした。(日本の「夜明けも遠く」感じますが)決して希望を捨てない生き方に心揺さぶられます。
 “Ubuntu”(ウブントゥ)-これは、南ア地方の言葉で、「みんながいるから、私がある」という意味です。即ち、南ア版「みんなで生きる」とも言える、温かい言葉です。「共に生きる」平和を!

●児童労働反対世界デー(6月12日)~“先ず、子どもを!”

 「ナズマ/6歳/ゴミ処分場
 ダッカのゴミ処分場で資源ゴミを探すナズマ(6歳)。早朝5時から働き、集めたガラスやプラスチックなどを換金して家計を支えている。怪我や病気のリスクを背負って得られる収入は1日30タカほど(約40円)。日が昇って気温が上がると帰宅し、弟たちの世話をして母親を助ける。『今年から学校に行きたかったけれどまだ無理。来年からは学校に行きたい。』ここにはたくさんの子どもたちが働いているので寂しくはないようだ。ゴミ処分場で働く子どもたちに一番つらいことは何かと聞くと、『豚のえさを漁っていると差別的な目で見られること。汚いと言われてバスに乗せてもらえないことある』といった」
             (フォトジャーナリスト 渋谷敦志氏/児童労働反対世界デーHPより)

 2009年11月20日に「子どもの権利条約」が20周年を迎えました。しかし世界中の子ども達が児童労働を余儀なくされており、「世界中のナズマ」は、2億1800万人(2006年ILOグローバルレポート)に及びます。世界の子どもの7人に1人が、今この瞬間も過酷な労働を強いられています。ちなみに「最悪の形態の児童労働」とは、債務労働、人身売買、子どもポルノ・買春、子ども兵士、危険・有害労働などを指します。
 「子どもの権利条約」の4つの柱は「生きる権利・育つ権利・守られる権利・参加する権利」で構成され、40の条文があります(193の国と地域が批准/‘06年12月現在)。私達は子ども達の今、そして未来を奪っている大人の傲慢・強欲と構造的な暴力を一刻も早く改め、行動を起こすよう連帯が求められています。