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総主事通信10年度③

2010.07.08

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今月のコメント

●「海は隔てるのではなく、つなぐもの」

 NHKの大河ドラマ「龍馬伝」で、勝海舟が語った「海は国と国とを隔てるのではなく、つないでいるのだ」が強く印象に残っています。でもこの言葉は色んなところで語られているようです。作家 塩野七生氏の「ローマ人の物語」や、それ以外にも様々な人達がこの言葉を用いておられます。歴史家ではないので、どなたがオリジナルなのかは定かではないのですが、とにかく「隔てるのではなく、つなぐ」という考え方に共鳴します。私達の日常は、つなぐのではなく、隔ててばかりですから、、、。
 「つなぐ」と言えば、やはりW杯。五輪を凌ぐ世界大のイベントとして、216の国と地域がつながりました。躍動するアフリカを身近に感じ、世界を実感したアフリカ大陸初の大会でもありました。途上国が等しく参加したスポーツの祭典。一つのサッカーボールと躍動する魂が私達の心を熱くつなぎました。

 印象深いことを一つ。韓国の決勝トーナメント進出が決まった際に、同国の若者が「日本も一緒に決勝Tへ行けますように」と語り、ベスト8の夢破れた時には、「アジアの代表として、韓国の代わりに頑張ってほしい」とエールの言葉を頂きました。一時代前であれば考えられないことです。歴史的な記憶が両国の関係に、深い溝と分断をもたらしてきたからです。奇しくも、日韓併合から100年の今年。出会いと継続的かつ多元的な交流が、互いを大切にする持続可能な社会へ発展することを願っています。

 話は少し飛びまずが、「国際協力(international cooperation)」ではなく「海外協力(overseas ・・・)」という言葉を冠する数少ない団体として、海を越えた人と人とのつながりが相互協力の礎である、との思いも重なった次第です。

●先ず、知るところから

 「世界は平和ではない。都内3か所で開催中の報道写真の展示会を訪れると、改めて思い知らされる。主な撮影地はアフリカ、南アジア、中東。・・・児童労働、女性の人権、政治活動や表現の自由、難民など闇も深い。すべての底には貧しさという古くて新しい問題がなお横たわっている」(日経2010 7.5)

 「国務省は14日、世界の人身売買の実態に関する年次報告書を発表した。・・・日本政府に対しては、人身売買の『捜査や訴追、被害者の特定や保護が不適切』と指摘。東南アジアなどから就労や偽装結婚を目的に訪日した女性が売春を強要されている、とも報告した。主要8カ国(G8)で『最低水準以下』としたのは日本とロシアだけ・・・」(朝日 2010.6.16)

 米国務省の人身売買に関する年次報告書は、日本政府の取り組みを「最低水準を完全には満たしていない」(4段階のうちの上から2番目の評価)と指摘しています。6年連続で。2004年度報告書では、第2段階の中でも下位の「要監視国」でした。私達は世界の貧困を嘆きながら、日本の貧困に目をそむけ、世界の闇に心を痛めながら、身近な闇を他人事としています。現実と向き合わねばなりません。
 命と人権が守られ、平和を築くためには、先ず知ること。世界各地で、すぐそこで何が起こっているのか?に関心を持ち、自分とのつながりを見出し、何ができるのか、と自問自答するところから、です。

●「はやぶさ」と支えた人々~使命実現へのたゆまぬ努力と協力
 
 3億キロの彼方にある小惑星イトカワに着陸して再び地球に戻った「はやぶさ」は、自分の力で判断し行動するロボットで、総行程60億キロという気の遠くなる距離を一人ぼっちで旅した「さすらい人」です。

 「はやぶさは7年間に何度も危機に見舞われた。とりわけ7週間も交信が切れたり、4つのエンジンが故障したりしたときは絶望視されたが、奇跡的に乗り越えた。故障しても動かし続けることができたのは、技術を熟知した技術者と研究者の力が大きい。チームのリーダーである宇宙航空研究開発機構の川口淳一郎教授は『意地と忍耐と、最後は神頼み』だったというが、チームが一丸となってあきらめずにがんばれば、道が開けることも教えてくれた」(朝日 2010.6.16)

 「ピーナツ形のイトカワは長さ約500m。パリのカフェに豆粒が転がっているとして、東京からそれにようじを命中させる離れ業だった」(日経 2010.6.22)

 離れ業は、技術と叡智の賜物でしょう。けれどそれ以上に、「はやぶさ」自体とそれを支えた人々の「人間くささ」に魅かれます。最後は自身燃え尽きて、太陽系の起源の調査に寄与するカプセルを差し出した「はやぶさ」の献身的な働き。「最後は神頼み」だったという技術チーム。その阿吽の呼吸と協力が不可能なミッションを、可能にしたのでした。”Never Give Up”の精神、そして不断の努力と協力の結晶として。