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10年度総主事通信⑨

2011.01.12

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今月のコメント

●「力」と「心」~“パワースポット”

 少し前のことですが、日本基督教団吾妻教会の上林順一郎牧師が、「本のひろば」増刊号2009で、「最近書店で目につくのは『力』という題名の本がやたらと多いことである。・・・『力』への期待や願望が強くなっているということだろうか。それとも『力』の喪失を悲しんでのことなのだろうか。そんななかで、キリスト教とは直接関係ないが、『力は弱さの中でこそ十分に発揮される』とのパウロの言葉の意味を考えさせられる本、三冊」として、「悩む力」(姜尚中著)、「鬱の力」(五木寛之・香山リカ著)、「<弱さ>のちから」(鷲田清一著)を紹介しておられます。私も同じ思いがしておりました。

 今も、「○○(する)力」本があちこちの書店に並んでいます。誰もが「力(=元気や希望)」を求めています。「パワースポット」に人気が集まるのもその現象の一つ。力だけでなく、癒しも、でしょう。本の題名にある「○○する“力”」を“心”に置き換えると、本質的は、誰もが「心」を求めていることが分かります。

 キリスト者にとっての“パワースポット”は教会です。けれどそのパワーは“内なる力”を意味します。静かに自分と向き合い、神様と対話し、生きるための“Why”を見出すことが、心(魂)の渇きを潤します。
 ちなみに、もう一つの「悩む力」(副題“べてるの家の人びと”)斎藤道雄著/みすず書房もお勧めです。
 

●「2011年『生きる』カルタ」(Big Issue 日本版 158号/ 2011.1.1)

 ホームレスの人たちが自立の手立てとして路上で売っているBig Issue日本版が、「お正月に考える、生きる力の源泉」として、“いろはカルタ”を特集しています。その一部をご紹介します。

 に→人間には逃げなければならない時がある。逃げる者のほうが正しい場合もある。逃げることを恥じるに及ばない。ニッコリ笑って逃げることだってできるはずだ(「大人になるということ」/佐藤忠男)

 と→どこまで行けるかを知る方法はただ一つ、出発して歩き始めることだ(アンリ・ベルグソン/哲学者)

 ち→沈黙することを学びなさい。静まった心に耳をすませ、吸収させなさい(ピタゴラス/数学者)

 く→暗闇を呪うことよりも、一本のロウソクをともすほうがいいって聞いたんだよ(「スヌーピー」/チャールズ・M・シュルツ)

 ふ→船荷のない船は不安定でまっすぐ進まない。一定量の心配や苦痛、苦労は、いつも、誰にも必要である(ショーペンハウアー/哲学者)

 し→真の意味でぼくを豊かにしてくれたのは、ぼくが受け取ったものより多くのものを与えた場合だけだったということを認めなければなりません(サン=テグジュベリ/作家)

 追加の説明は不必要でしょう。「生きる時間、生きる場、生きる時代に向き合う」言葉として味わいたいと思います。今朝も路上生活をするの販売者の方に「いってらっしゃい」と言葉をもらい、元気が出ました。

●「2011年は新しい幸福の時代の始まりになりうる」(Jeffrey Sachs/COURRiER Japon 2011年2月号)

 著名な経済学者であるJeffrey Sachs氏(コロンビア大学地球研究所長/国連ミレニアム開発プロジェクトディレクター)は、「5つの不均衡」とその是正について述べ、「モノの増加と精神の成熟の間に、新しい『賢明な均衡』を見つけなければならない」と指摘しています。

 ①貧困層と超富裕層との間の「文化の不均衡」
   →健康・教育・社会参加の機会を子ども達に開くこと
 ②現在と未来の不均衡
   →現在の負の遺産に対して適切な対処をし、未来へ積み残さないこと
 ③生産活動と自然の不均衡
   →自らの破壊力を認識し、自然資本の搾取を抑制すること
 ④仕事と余暇の不均衡
   →ワークライフバランスを保ち、健康で幸せな暮らしを追求すること
 ⑤国家安全保障と開発支援の不均衡
   →巨大な軍事費を開発問題へ投資し、真の平和を構築すること

 「貧困、環境、安全保障といった問題はどれも、私達の技術と知性をもってすれば解決できないものではない。・・・2011年は新しい幸福の時代の始まりになりうる。そして、それを選ぶのは私たち自身なのだ」

 私達は、地球規模でも身の回りでも、「不公正・不正義」だらけ、と感じています。諦めと溜息交じりで。しかし解決の糸口は、私達自身にあります。暗闇に一本のロウソクを燈すような知恵と力が、きっとそこに。