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10年度総主事通信⑩

2011.02.04

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今月のコメント

●2011.1.17 KOBE/ポーポキのピースプロジェクト(by Roni Alexander)
 
 「今年もポーポキは泣く。恐怖を思い出して、泣く。悲しみを思い出して、泣く。無力感を思い出して、泣く。
  今年もポーポキは微笑む。人の親切さを思い出して、微笑む。生きる喜びを学んだ自分を思い出して、微笑む。自分にもできることがあると自覚し、微笑む。」 
 
 友人のロニー・アレキサンダーさん(神戸大学大学院国際協力研究科教授)は、ポーポキのピースプロジェクトの推進者です。ロニーさんは最愛の猫ポーポキを喪い、このプロジェクトを立ち上げて、平和を創り出すために国内外各地への行脚を続けています。
 平和の絵本は、「平和ってなに色?」(2007年)に続き、「友情ってなに色?」(2009年)が出されていますので、是非HP http://popoki.cruisejapan.com/をご覧下さい。

 ロニーさんは先日、平和を築くためには「非平和」(軍事基地・性暴力・人権侵害など)の実態を知ることから、と宮古島へ旅をしました。宮古島の、16箇所の日本軍「慰安所」があった「アリランの碑」を訪れ、「南静園」というハンセン病施設では退所者の方のお話を伺ったそうです。
 ロニーさんは、「ポーポキの平和のパレットに『宮古島』という新しい色が加わった」(神戸YMCA会報「神戸青年」 2011年1月号)と語っています。

 ロニーさんは震災を経験しています。詩は、16回目の阪神・淡路大震災の日(1.17)を想い、作られたものです。
 悲しい記憶は消せません。しかし乗り越える日が来ると思います。想いを分かち合う友を得たときに。怒りや憎しみは消せません。しかしいつか、乗り越える日が来ると思います。平和を分かち合う友を得たときに。

●ゴォォォール!!

 1月30日未明/日本時間、「ドーハの悲劇」は「ドーハの歓喜」に変わりました。サッカー日本代表がいずれも薄氷の接戦を勝ち抜き、アジアの頂点に立ちました。豪州との決勝の延長戦後半に相手のゴールネットに突き刺さった“Wonderful”なゴールは、帰化した在日コリアン4世である李忠成選手によるもので、私達の記憶に深く刻まれました。
 代表23人のうち21人がピッチに立ち、日替わりメニューのようにヒーローとなったのは、控えの選手でした。試合後、我先にとザック監督と抱擁する選手達の姿に、「信頼」というマジックが見えました。

 それに先立つ21日(金)に大阪で、「もう一つのゴール(イン)」がありました。地球を一周する「アースマラソン」に挑んだタレントの間寛平さんは前立腺がんを治療しながら、4万1040キロをマラソンとヨットで駆け抜けたのでした。766日目のゴールは、多くの人々の心を揺さぶりました。一人の人間の可能性という、前人未到のフロンティアへの挑戦でした。しかし、それはヒーローを支える家族や仲間達の支えがあってこそ、でしょう。

 さて国連ミレニアム開発ゴール(MDGs)は、美しいゴールや感動的なゴール(イン)にはなりえないかも知れません。「世界の貧困を半減させる」という、目標達成期限まであと5年、待ったなしです。ゴール前に立ちはだかる幾多の困難や障害は枚挙に暇がありません。しかし、国連や政府、NGOだけでなく、地球市民として生きる私達一人ひとりの自覚と行動とその地道な積み重ねが力を発揮し、ついに“ゴォォール”となりますように。4年後のワールドカップ同様、MDGsの闘いも辛く厳しい。けれど人間の知恵と神の導きに賭けたいと思います。

●「新しい現実」の世界

 「エジプト国内24のYMCAとスタッフ、会員、ボランティアは無事である。ただ、ここ数日異常な緊張感にさらされている。多くのYMCAが閉館を余儀なくされているか、数時間しか会館出来ていない。どうか私達の未来のために祈ってほしい」(2011年2月1日、Samy A. Nashed エジプトYMCA総主事)
 これは、混乱の只中にあるエジプトYMCAからの叫びです。

 中東・北アフリカ地域で連鎖する民衆の反乱という「巨大な津波」は、「新しい現実」(ダボス会議の今年のテーマ)のもう一つの側面のように思えます。民衆蜂起に、かつての日本の「一揆」を思い起こします。
 背景には、格差や貧困という現実、長期の専制支配への鬱屈した憤り、宗教・政治や民族間の対立、そして政権の後ろ盾となる米国を始め欧米先進国のパワーポリティクスなどが複雑に絡み合っています。反体制・民主化を進めれば、反米の動きも激化する、という諸刃の刃状態は、もうひとつの波乱要因です。

 この「顔(指導者)の見えない」市民革命の原動力は、つぶやきブログである“Twitter”や交流サイト“Facebook”に代表されるソーシャルメディアといわれています。Facebookは全世界5億5000万人の会員を持ち、この瞬間もアメーバ増殖のように、ネット空間で/目に見えない速さで、ネットがワークしていきます。
 ちなみに、内部告発サイト“Wikileaks”の情報暴露が超大国を脅かすように、今や武器/兵器は、「情報」になりました。もう一つの武器は「通貨」です。私達はまさに、「新しい現実」の世界に突入しています。

 民衆革命が新たなカオス/混沌に至る暴走なのか、来るべき市民社会のために避けて通れぬ代償/試練なのか、判断しかねます。私達は、怒りは国境を越えて瞬時に広がる世界の現実を目の当たりにしています。しかし、平和のネットワークは、日々の営みの中で人と人とを確かな絆で紡いでいくと信じたいです。
 今はただ、エジプトYMCA総主事の言葉のように、苦難にある「人々の未来のために」祈りたいと思います。