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JOCS看護チームによる第1回訪問ケア活動について

2011.09.02

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JOCS看護チームによる第1回訪問ケア活動について 日本キリスト教海外医療協力会(JOCS) 総主事 大江 浩 JOCSは、カリタス釜石(カトリック釜石教会)のご協力を得て、釜石地区の被災者支援を続けています。 主なものの一つはカリタス釜石「心のケア」チームへのカウンセラー派遣(毎月、月命日を挟んで)、もう一つは看護チームによる仮設及び在宅被災者のための訪問ケア活動です。 看護チームによる第1回訪問ケアは、8月17日~24日の日程で行われ、計8名の看護師の方々にご協力を頂きました。 今回のその振り返りと今後の活動に向けて、先日大江が出張をしましたので、現地の様子などを少しお伝えしたいと思います。 1.現地での活動の様子: 1)白浜地区の在宅及び仮設住宅を訪問 ◇白浜地区は釜石市街から車で45分ほど離れた孤立集落で、自宅ないし同エリアの仮設に入居されている方々は、医療・生活面でも大変不便不自由な生活を余儀なくされています。 ◇看護チームが避難所に常駐し、巡回診療活動を続けていた際に知り合った被災者の方々をお訪ねしました。  皆さん、温かい笑顔で歓迎してくださり、避難所時代の看護チームの働きがあってこそ、でした。人と人との絆の大切さを改めて感じた次第です。 2)釜石の仮設住宅の訪問に参加 ◇仮設への入居によって、プライバシー空間を得て落ち着かれた方、避難所での人間関係を失い孤立感を深めた方、二極化する現状があるように思えます。  ストレス障害、アルコール依存、抑うつなど、場合によっては自死に至るケースを大変憂慮しています。 ◇仮設住宅では、表札に名前がなく、かつ扉を閉じている場合は「見えない壁」が立ちはだかります。  阪神大震災の際も直面した「孤立死」を防ぐ対応が求められます。 2.諸課題: ①活動の目的は避難所で繋がりのできた被災者の方々への継続的なケアでしたが、避難所から仮設への入居あるいはご自宅へ戻られた方々の所在確認にことのほか苦労をしました。 「個人情報保護」が理由です。ですが、避難所で知り合った方々が丁寧に教えて下さり、フォローすることができました。 「情報」はやはり「人・人との繋がり」でした。 ②誠に痛ましいですが、大変お世話なった被災者の方のお連れ合いの「自死」に遭遇し、一同ショックを受けました。  釜石地区では震災後2人目です。外部者であるJOCSにできることの限界を痛感し、深い痛みを覚えつつ、対応の大切さと難しさを向き合っています。 ③阪神大震災では、仮設住宅にLSA(ライフサポートアシスタント/生活支援相談員)が配置され、見守りとケアを行っていました。  そうした過去の経験や教訓が、「次の犠牲者」を出さないための知恵と工夫の一つであると考えられます。 3.全体を通して: ①今回の看護チームの方々は、「時間があるから」と参加くださった方や多忙な病院勤務の合間を縫って休暇利用で来てくださった方など様々でした。  皆さんの思いは一つ、知り合った釜石の被災者の方々と「もう一度会いたい。フォローアップを行いたい」でした。  そこに「人の温もりがある」から、です。これがいわゆる「釜石病」でしょうか。 ②「普段の仕事とは異なる被災者支援ボランティアを体験して、人と関わるうえで視野を広げ『看護観』が変わった」という言葉も伺いました。幸いです。 ③妻と悲痛な死別体験をされた方のことが気遣われます。「自死」の背景には様々な要因が複雑に絡み合っているように思えます。  遠く離れた所であっても、共に生きようとする仲間たちがいること、支えたいと思っている人たちの気持ちが伝わりますように。  また地元の方々のご苦労に敬意を表し、祈りたいと思います。 ④死別・喪失体験をした人自身のケア、家族やその周囲にいる人のケア、「ケアする人のケア」など、様々な課題があります。  JOCSとしては常駐者を派遣しているわけではなく、また定期的な関わりは持っても常時ではありません。  「外部者」である立場をわきまえつつ、カリタス釜石の活動を敬意を払い、どのような協力をいつまですべきかを常に考え、共に歩んでいきたいと思います。  道のりはまだまだ長く遠いですが。 今回の看護チームの訪問ケア活動のことを、地元の方々がとても評価をしてくださいました。 微力な団体であるJOCSです。被災地での支援を通して、こちらが励まされています。 看護チームの今後の活動予定は、次回は11月下旬、第3回は来年1月中下旬、第4回は同じく3月中旬です。 冬の時期、白浜地区など孤立集落への往復は、道路の降雪・凍結によって困難が予想されますが、地元の方々とも相談しながら、必要な支援が行えるよう力を尽くしていきたいと思います。