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11年度総主事通信 ⑦

2011.11.17

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今月のコメント

●「ふるさと」を歌う~「ふるさと」を想う

 11月初旬、JOCSの東日本大震災支援のため、賛育会チャリティコンサート「祈り、そして希望の光」が開催されました。プログラムの最後、すみだトリフォニー大ホールの来場者約1,200名がパイプオルガン・トランペット・ピアノの伴奏とソプラノのリードにより「ふるさと」を合唱しました。心震える感動を覚えました。
 それに先立つ10月下旬、米国SFの日系人グループと共に気仙沼を訪れました。グループに参加したハワイ出身の日系人プロミュージシャンとフラダンサーは、気仙沼行の前には映画「フラガール」で有名になった常磐ハワイアンズ(福島県いわき市)でも被災地への激励のためハワイアン交流を行いました。
 気仙沼では、仮設住宅のお年寄りやお母さん・子どもたちと共に、ハワイの心地よい音楽とパフォーマンスに癒されました。最も心に残ったのは、沖縄の「涙そうそう」(森山良子&BEGIN)とハワイの「Ka Nohona Pili Kai」(Keali’i Reichel & Puakea Nogelmeier)のメドレーです。「Ka Nohona・・・」は、「涙・・・」の美しい調べにインスパイヤされた曲で、メロディはほぼ同じです。しかし内容は対称的で、「涙・・・」は悲しみを、「Ka Nohona・・・」は喜びを歌う曲です。「Ka Nohona・・・」は、ハワイの言葉で「美しい島」「平和な海」を意味します。日米のふるさとを想う歌が心に沁み渡りました。日系人の方々の、被災した「ふるさと」への想いは深く強いものです。同時に、3.11を期に「ふるさと」を奪われた方々に居たたまれぬ想いも持ちました。

●3月11日午後2時46分~あの日あの時
 
 「・・・ニュートリノなる素粒子が光より速いと報告された。・・・速度では光を0.0025%上回る。・・・『行けるなら未来か過去か』・・・今年のいつかということであれば、迷わず3月11日の朝に飛ぶ。ハンドマイクを携えて」(朝日・天声人語 2011.9.28)
 この筆者はその時、「ハンドマイクを携えて」で叫んだに違いありません。「逃げろ!!」と。しかし逃げることができなかった人たちがいます。それは福島第一原発の職員です。現場の過酷な作業は8か月に及びます。作業のために、各地の寄場の日雇い労働者が「それとは知らされず」雇用された例もあります。
 朝日新聞の連載「プロメテウスの罠(わな)」では様々な事実が明らかにされています。しかしそれは事実のほんの一部、今も謎だらけです。「プロメテウス」とは、「人類に火を与えたギリシャ神話の神族」です。「火」は凍える人に暖を与える一方、人の命を奪う「武器」ともなりました。3.11の原発事故は、愛するふるさとと人々を無残に引き裂きました。そして今福島では18歳以下の全県民は「甲状腺検査(2年毎)を生涯にわたって」続けなければなりません。多くの人々の人生を悲劇に変えました。
 さて、内閣府は「震災関連自殺」は4か月で38人に上るとしています。「取り残され、忘れ去られる」被災者の孤立化は深刻です。長く厳しい冬の寒さはさらにそれを進めます。NHK特集「東日本大震災 助かった命が、なぜ」(11/13)では、JOCS看護チームが関わる被災者の方(妻を自殺で喪われた男性)が出ておられました。「あの日、あの時」が分けた生と死。タイムスリップが可能であれば、、、切なる願いです。

●“誰かのために働く”~「ちむぐりさ(肝が苦しむ)/憐れむ」

 缶コーヒーのCMに登場する宇宙人ジョーンズのポスターが何故か気になります。背景となる曇天に虹がかかっています。宇宙人ジョーンズは呟きます。「誰かのために働く」と。「CM天気図」(天野祐吉/朝日新聞のコラム)に、あの曇り空は、被災地の空だと書いてあったと記憶しています。ポスターには場所は明記されていません。しかし、被災地で「誰かのために働く」人々の働きが静かに伝わってきます。
 さて、元キャンディーズのスーちゃんこと田中好子さんは、3.11から約1か月後に乳ガンのため55歳の命を終えました(私は奇しくも同学年です)。「・・・私も一生懸命病気と闘ってきましたが、もしかすると負けてしまうかもしれません。でもその時は必ず天国で被災された方のお役に立ちたいと思います。それが私のつとめと思っています」というメッセージを残して。
スーちゃんは同時代の人です。キャンディーズ全盛期もさることながら、映画「黒い雨」(1989)での素晴らしい演技(日本アカデミー賞最優秀主演女優受賞)が記憶に残っています。国立国際医療センター顧問やエイズ予防財団・日本ストップエイズ基金の運営委員を務めていたことはあまり知られていません。
「天国でも被災された方のお役に立ちたい」-一体全体誰が、そこまでの想いを持てるでしょうか?
 “誰かのために働く”-そのシンプルな言葉は説得力を持ちます。ボランティアの意味を示す言葉です。
 「ボランティア元年」である阪神大震災以後、ボランティアの文化が根付きました。阿部志郎氏は「ボランティアの招待」(岩波書店)で、沖縄の「ちむぐりさ(肝が苦しむ)」、聖書の「憐れむ」(マタイ9.36)がボランティアの原点としています。心が震えるほどの、止むに止まれぬ想いが人を誰かのために動かします。