HOME>ニュース>11年度総主事通信 ⑩

ニュース

11年度総主事通信 ⑩

2012.02.17

シェア ツイート

今月のコメント

●支援者のケア、ケアする人のケア

 「東日本大震災の被災地で働く看護師を対象にしたストレス調査で、3分の1が心的外傷後ストレス障害(PTSD)が懸念される状態にあることが分かった。うつなどにつながりかねない『精神的不健康』度の高い人も約3分の2に及ぶ。調査した専門家は『ほかの惨事後に実施されたストレス調査結果より特異に多い。うつや離退職につながりかねない』としている」(朝日 2011.12.29)

 「東北の被災地で働く公務員の、心と体が心配だ。自治体の職員は、経験したことのない復興や原発事故対応に携わる。警察官や消防署員は、いまなお行方不明者の捜索にあたる。学校の先生は、くじけそうな子はいないかと目を配る。医師や看護師は、住民の健康を見守る。・・・彼らの多くも、家族や同僚を亡くし、家も失った被災者だ。・・・40人近い同僚を失った宮城県南三陸町の職員の言葉が、心に残る。
 『ここで逃げたら、職員として人生が終わってしまう。病院で診断書を書いてもらえば仕事は休めるけど、それはできない』・・・『復興庁の支所が地元にできるなら、職員をケアする窓口もつくって』。南三陸町の副町長の訴えはもっともだ。彼らを、孤立させてはいけない。」(朝日 2012..2.2)

 2月10日のJOCS海外保健医療勉強会にて、大江自身の、阪神・淡路大震災、東日本大震災や国内外の支援や少年事件などのトラウマ(心的外傷)に満ちた体験と、隠れた被災者/二次被災者とも言われる支援者へのケア、「ケアする人のケア」のことについて、事例と米国SFでの研修(計2回)を交えてお話をしました。

 「ともにいることは、援助の最初の一歩であり、最後の砦である」(小西聖子「犯罪被害者の心の傷」白水社)

●「ポーポキの友情物語」(byロニー・アレキサンダー) http://www.youtube.com/watch?v=otFb7_3S-Kk

 友人のロニーさん(神戸大学教授)の東日本大震災と平和の旅の本です。ロニーさんとは釜石でも会いました。被災地3県を含め、国内8か所、海外5か所 計13か所を繋いだ平和の旅は、「ポーポキ友情物語」と名付けられた60メートルの布(様々な絵や寄せ書きが書かれた)になりました。Youtubeでも観られます↑。

 「砂とゴミに覆われた被災地に花を見つけたとき、泣きました」(2011.4 仙台市)
 「友情には、違いをも超える力があります・・・」(2011.6米国LA)
 「胸が張り裂けそうな悲しい時も、心を満たすような平和な時も、ネパールは永遠に日本の友達です」(2011.4ネパール人留学生)
 「この空は、昨日の空からにつづいていて、明日の空へ、あなたの空につづいている。こんなに無力で、ことばも無力で、空を見上げる」(2011.6大阪市)
 「平和。それは寄り添うことから始まるかもしれません」(ロニーさん)

 私も阪神大震災以降、米国SFの日系人をはじめ国内外の人々に励まされて生きてきました。災害という悲劇が人と人とを出合わせる。「友情」(少し懐かしい響きのある言葉ですが)が世界を繋ぎ、平和を紡ぎます。

●第42回ダボス会議/パブリックアイ・ピープル賞/俳優 渡辺謙のスピーチ

 1月末に世界経済フォーラムの第42回年次総会(ダボス会議)が開催されました。今回のテーマは、「資本主義=時代遅れの資本主義の変革」でした。前回のテーマは、「新しい現実にどう取り組むか」。全くの経済音痴には「新しい現実」とは何か、あるいは「時代遅れの資本主義」とは何か、はさっぱりわかりませんが、その根っこにある「深刻化する世界の混沌と出口の見えない閉塞感・焦燥感」は伝わります。

 さて、ダボス会議の時期に合わせて、スイスのNGO「ベルン宣言」と同国のグリーンピースが毎年「パブリックアイ賞」を発表しています。それは「最も無責任で社会正義に適わない企業」を決定する賞で、審査員による「グローバル賞」とインターネット投票による「ピープル賞」の二つがあります。
 今回は、「ピープル賞」に東京電力がノミネートされ、僅差で第1位は逃したものの「第2位の不名誉」に輝きました、、、。ちなみに第1位はブラジルの総合資源開発企業「ヴァーレ」で、第3位は韓国のサムソンでした。

 今回のダボス会議では、日本人芸能人としては初めて、俳優の渡辺謙さんがスピーチを行いました。HP「Kizuna311」などの復興支援活動が評価され招待されたのです。http://kizuna311.com/

 「多くの幸を恵んでくれた海は多くの命を飲みこみ、生活のすべてを流し去った。そこに何が残っていたか。何も持たない人間だった。行き場を失った人々に残ったのは、人が人を救い、寄り添う『絆』という文化。
 (絆は)漢字では『半分の糸』と書く。半分の糸がどこかの誰かと繋がっている、という意味。絆は、全てが流されてしまった荒野に残された光だった。今日本は少しずつ震災や津波の傷を癒し、絆を頼りに前進しようともがいている。
 原子力という、人間が最後までコントロールできない物質に頼って生きていく恐怖を味わった。再生可能エネルギーに大きく舵を切らなければ、子ども達に未来を手渡すことはできない」

 メッセージを持つ人の言葉と力は、とてもとても重く深く、心に響きます。