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12年度総主事通信 ②<No.62>

2012.06.18

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今月のコメント

●「声」を上げ・続ける~人々の「声」になる

 3.11以来、折に触れ心に響く人と言葉を紹介してきました。今回は、先日帰天されたお二人です。
 新藤兼人監督(100歳。まさに生涯現役の人でした)
 「かけがえのない人を十把一絡げで殺すのが戦争」。「反戦平和への信念は、兵役の体験が根底にある。『(私は)ゴミみたいな中年兵の一人』だった」(朝日2012.6.1)。新藤監督は、召集仲間100人のうち94人が戦死し、生き残った6人のうちの1人です。その過酷な戦時体験に基づき98歳の時に映画「1枚のハガキ」を撮りました。「死ぬまでに映画『ヒロシマ』をつくりたいんです」(朝日2012.5.31)と、次への意欲をお持ちでした。戦場で無惨に散った仲間たちや被爆死した人々の魂と共に叫び続けた百年でした。

 二言追加。「老人の武器は挫折です」⇒挫折は若者だけの特権ではない!!。「人は死んでしまうが、死なない人もいるのだ」⇒最愛の人と共に生き続けた人でした。怒りを包み込む愛が必要だったのです。

 原田正純医師(77歳。水俣病研究の第一人者、元熊本学園大学教授)
 原田医師は、半世紀を患者治療に捧げ、有機水銀が胎盤を通じて子どもに伝わる胎児性水俣病を突き止め、石牟礼道子著の「苦海浄土」(講談社)にも医学的な助言をしたことでも知られています。「勇気をもって告発され、あれほど丁寧に患者さんとお付き合いされた方は他にいません」(澤地久枝さん談)。「水俣病と福島第一原発事故を比較し、『放射能は海に出て薄まる』との専門家らの意見に(原田氏は)怒った。『海で薄くなったものが食物連鎖で凝縮されたのが水俣の教訓ではないか』」(朝日2012.6.12)。
 フクシマは、ミナマタと繋がっています。

 「一番の専門家は患者さんだ」。弱い立場の人たちの側に立ち、患者に学び、寄り添い続けた一人の医者でした。そこに医療の原点を見ます。私たちも、微力ながら、人々の「声」であり続けたいと思います。

●「母の日宣言」~社会と世界を見つめる「目」となる。

 5月13日は母の日でした。「殺戮の臭いがする夫を抱きしめない。他国の息子を殺す訓練を息子に受けさせない。南北戦争後の『母の日宣言』」(朝日 2012.5.12)。米国の南北戦争後の1870年、女性参政権運動家であり、リパブリック讃歌の作詞者であるジュリア・ハウは、夫や子どもを戦場に送るのを絶対に拒否しようと、「母の日宣言」を出しました。それから142年、母の日の宣言は忘れられ、路上にまで戦場が広がり、母と子の無差別殺戮にまで至っています。天国からハウの怒りの声が聞こえるようです。
 「母の日」というと、英国の偉大な科学者ファラデーの言葉を思い出します。ファラデーは、「確かに(試験管に入れた母親の)涙を化学的に分析すれば、少量の塩分と水分に過ぎない。しかし母親の涙の中には化学も分析しえない、深い愛情がこもっていることを知らねばならぬ」と語りました。
 
 世界報道写真展2012の大賞は、「中東イエメンの反体制デモの最中に傷ついた息子を抱きかかえる黒ずくめの母親」を撮ったサムエル・アランダ氏の写真です。
 「シリアでは・・・虐殺がやまない。銃弾をかいくぐるレンズは、(世界報道)写真展の審査委員長エイダン・サリバン氏(英国)の言葉を借りるなら、『暗闇の中の私たちの目』である。闇の実相を命がけで伝える目があって。惨めに転がる子どもや女性は『物言う遺体』となる。・・・人々の勇気に携帯カメラなども加勢し、目は無数なのだ」(朝日 2012.6.10)。私たちは、愛を憎しみに変えるあらゆる暴力をストップさせるため、一人ひとりが「目」となって、この社会と世界をしっかりWatchしていかねばなりません。

●二人の「元子ども」のVoice~「あなたが世界を変える日」

 ミシェル・チクワニネさん(24歳。元子ども兵士、コンゴ共和国出身)
 6月12日は「児童労働反対世界デー」です。先日キャンペーンイベント「僕は5歳で兵士になった~元子ども兵士が語る最悪の児童労働」に参加し、5歳の時に誘拐され、子ども兵士となったミシェルさんの体験談を聞きました。ミシェルさんは、父親が拷問を受け殺害される現場やレイプされる母親を目撃しました。父親を含む580万人以上が命を落とした内戦時代に育ち、11歳の時に難民となって故郷を離れた経験を持ちます。彼が生き延びたからこそ聴ける、凄惨な現実に心を痛めると同時に、彼の声を上げ続ける勇気に感動しました。世界各地には、30万人以上ものミシェルさんのような「子ども兵士」がいます。

 「世界では、2億1500万人の子ども達が児童労働に従事し、少なくとも約半分の1億1500万人が最悪の形態の児童労働をさせられている」(ILO/世界労働機関)。「最悪の形態の労働」とは、18歳未満が関わる、「人身取引、債務奴隷、強制労働、子ども兵士、売買春、児童ポルノ、麻薬の生産・密売などを含む4つの労働」を指し、「大人の悪意と欲望」が根底にあります。私たちは、そこにも「目」を向けたいと思います。

 セヴァン・カリス・スズキさん(32歳。カナダ人日系4世。リオサミットでの「伝説のスピーチ」で知られる)

 「大人たちに生き方を変えてもらうために、自分たちでお金を集めて6千マイル離れた所からきました。私たちは子どもだから解決策は知りません。・・・オゾン層の穴を閉じる方法だって、絶滅動物を生き返らせる方法だって、砂漠に森を蘇らせる方法だって誰も知らない。どう直すかわからないものを壊すのは、もうやめて下さい。・・・・」(1992年のリオ地球環境サミットの演説抄録から)

 セヴァンさんは、20年前の「リオの伝説のスピーチ」によって「世界を6分間沈黙」させ、魂を揺さぶった12歳(当時)の少女です。今はカナダのアラスカに近いハイダグワイ島に先住民の夫と子ども2人と共に住んでいます。ハイダグワイ島は、3.11の被災地からオートバイが流れ着いた島です。セヴァンさんの新作映画「セヴァンの地球のなおし方」を観ました。映画では、子を愛おしむ母となった彼女が20年前の自分のメッセージを重ねながら、今、世界に伝えたいことを語り、日仏二か国で傷ついた地球と向き合う人々の姿が映し出されます。メッセージは明確、「子どもたちの未来を守るためにみんなで生きる」です。彼女の伝説のスピーチは本になっています。題名は「あなたが世界を変える日」。「あなた」とは「わたし」です。