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「釜石訪問」 2012年7月9日~12日

2012.07.23

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今回もJOCSから派遣して頂いて、「釜石」訪問出来ましたことを心から感謝しています。 比較的、日々の中でも、人々と「祈りの集い」の中でも、祈りつつ、みことばに触れながら暮らしているとはいうものの、「釜石」では、剥ぎ取られた単純素朴な生活の中で「福音」を生きておられる人々に出会えることは恵みです。 30代の男性で、初期のころから、(カリタス釜石)ベースの「ふぃりあ(※)」の常連さんがおられます。 彼は、今回の震災に対しての政府の対応に不満を持っていて、1時間くらいは早口で不満を言い続けます。 ボランティアの中でも、彼にどう対応したらよいのか・・戸惑う人も多いのですが、馴染んでくると、彼の優しさ、純情に触れ、嬉しくなってきます。  ※カリタス釜石ベース(被災者支援センター)の心のケアサロン 彼の知る人ぞ知る特技は、手縫いの財布作りです。 札入れの形状ですが、中は仕切りやカード入れが沢山あって、小銭を入れるところも、ファスナーでこしらえてあり、和柄の好みの生地を選んで実に丁寧に、丹精込めて作られています。 それを、馴染んだボランティアにプレゼントして下さるのです。 私にも「けれ。」(あげる)と仰るので、「もったいなくて、とてもいただけません。」と言うと、「なら、捨てるべ。」と仰るので、「捨てたらだめです。もったいない。」と言うと、「けれ。」と仰るので、大切にいただきました。 聖書にある「やもめの献金」を思い出します。すべてを流された方がなけなしの中からくださるのです。 神様が豊かに祝福しておられるのは、私たちではなく、その方だと心から思います。 先月その人は、私ともう一人のボランティアに将棋で勝ち、大満足で、「しょうがねえ。送ってやるべ。」と言って、帰路に着く私たちを駅まで、ご自分の軽自動車で送って下さいました。 何か言うと「そんなもん、全部流されてねえべ。」と言って仮設暮らしなのですが、ぶっきらぼうで照れ屋の彼の優しさと純情は、彼の行動とまなざしににじみ出て、隠すことが出来ません。 また午前中は、週1回の「映画デー」でした。荻野目洋子(女優)が好きな70代男性は、今年、新生釜石教会(日本キリスト教団)で洗礼を受けられた個性的な温かい方です。 必ず映画の日にはいらっしゃり、人生の後半を神様に出会い、人生を楽しみながら生きておられ、宗派を超えて、神様が共にいてくださる時間を親戚のおじいちゃんと一緒にいるような感じで過ごします。 今、ここで、「共にいること」がすべてで、苦しい話も、厳しい現実も話さないのですが、心の触れ合う時間をご一緒に過ごします。 イエス様がお生まれになる時、神様は初めに、野宿の羊飼いにお知らせになられたこと・・・少し解るような気がします。 この世の色々なものが剥ぎ取られて、厳しい試練の生活の中で、はじめて神様が入ってこられる「いのちのスペース」と「人との真実の触れ合い」ができるのかもしれません。 またこの度は、クラシックとジャズのコラボによる「小さな音楽会」がありました。 クラシックの歌姫が美しい衣装をまとい、「アベ・マリア」など熱唱して下さり、聴きに来て下さった大勢の方々が魅了されました。 また、ジャズのサックスとパーカッションの素晴らしいセッションに、私たちも引きこまれ、共に歌い、楽しい時間を過ごさせて頂きました。 「被災地」(この様に呼ぶことの抵抗を今は極めて感じますが)には、様々な領域のプロが、ボランティアに来られます。 そこでは、有名であることや、地位があることの垣根を越えて、ささやかでも助けになればという「善意」と、それを素直に受け取って喜んでくださる人たちの美しい心の触れ合いがあり、ボランティア同士の出会いもまた豊かに花開いています。 「大人」たちが、あちらでもこちらでも、子どものような無邪気な笑顔と笑い声で、神様が下さったこの機会を喜びあっています。 またこの度は、ジャパンプラットホーム主催により、大船渡で「子ども支援」のためのスタッフ研修の講師を務めさせていただきました。 各NGO/NPOから25名くらいの参加があり、8名くらいが地元雇用の方でした。 余震があると泣きやまない子どもにどう対応するのがよいかなど・・被災後の子どもの変化に戸惑うスタッフのために、効果的な関わり方のための研修でした。 プログラムの中で、つらい思いの子どもへの「効果的な対応」と「コミュニケーションを阻む対応」を二人組でロールプレイをしていた時でした。 「私たちは、子どもに励ましたりなんか出来ない。寄り添うことしか出来ない。震災に遭ってない人には解らない。」と地元の方が泣き出しました。 空気が止まり、緊張に包まれました。その人の気持ちを大事にしたいと思いました。 何度か、会話をやり取りして、その方のお気持ちを聴きつつ、プログラムに戻していきました。 その方を見ると、涙の跡が乾かないまま、一生懸命聴いてくださっています。 こちらも精一杯、その方の気持ちを置き去りにしないよう、申し訳なく思いながら研修を進めました。 本当は、目の前のその方の気持ちを汲みださせて頂くことだけが大事なのではないかと思いつつ、他の研修を受けに来ている方のニーズにもお応えせねば、との思いの葛藤の中で、綱渡りの綱を歩いているような緊張の時間でした。 心配でしたが、研修後、多くの方が「ためになった。」と話しかけてきて下さいました。 そして、泣かれたその方も、晴れやかな顔で「勉強になりました。先ほどは感情が溢れてしまってすみませんでした。」と仰って下さり、感情を出されたことがよかったような感じで、ほっといたしました。 けれど、改めて、外から来ている経験していない私が、どれほど「解っていない」のかを教えて頂いた貴重な機会を忘れてはいけないと思いました。 本当に、大地震と津波の被害に遭われた方の想像を絶する苦悩を、もう一度、当日の写真を見、それが段々薄れて鈍くなってしまわないよう、今回あえてその時の写真を掲載させて頂きたいと思いました。 この写真の状況を体験した方のお気持にささやかでも、慰めになれますよう、お祈りのうちにまた行かせて頂きます。 毎月、カウンセリングを行っている方との時間、月命日(11日)の追悼の「テゼの祈り」、魂の深みで味わう一つひとつの時間は、私の心を洗ってくれているような気がしています。 感謝のうちに。 カウンセラー   白石仁美