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12年度総主事通信 ⑩<No.70>

2013.02.21

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今月のコメント

●“隣にある貧困“~切り捨てられていく命

 第43回ダボス会議(2013.1.23-1.27)の年次総会のテーマは、「Resilient Dynamism(弾力性ある活力)」。「世界経済のリスク・景気回復・社会のリスク対応能力増強という三大議題を巡って250回以上のシンポジウムが開かれ、150カ国以上の政財界から2,500人余りが参加」と報じられています。世界の政財界の議論にも、「アベノミクス」による円安と株価上昇の報道にも、違和感は拭えません。加速化するグローバル資本主義と格差拡大の影響は、世界の隅々に、身近な所に及んでいるからです。 
「世界の1%の富裕層の所得総額=57%の貧困層の所得合計額」は、世界の裾野に広がる現実です。
 政府は生活保護予算を、3年かけて実質的に6.5%(670億円)減額していきます。一方、2013年度の防衛予算は4兆7,538億円(増額400億円)、「国土強靭化」方針に基づく公共事業予算は5兆2,853億円(増額7,119億円)に。「人から、鋼鉄とコンクリートへ?」の政府方針の陰で、零れ落ち、顧みられぬ命があります。

 「仕事や住まいを失い、マクドナルドなど深夜営業の店を渡り歩いて夜を明かす『マクド難民』。大阪でそう呼ばれる人たちが増えたのは、多くの企業で非正規社員の採用が広がっているからだ。低賃金に苦しみ、いつ職を奪われるか分からない。そんな不安を抱えるマクド難民の『予備軍』も多い」(朝日 2013.2.18)

 少し前までは、「ネットカフェ難民」でした。しかし一晩1,000円のネットカフェ料金が払えず、1杯100円のマクドナルドに「滞留する」若者たち。その現実は、ダボス会議のメンバーや日本の政財界の視野に入りません。

 野宿者の街、横浜・寿で出会うこと(昨年12月にJOCSフィールドセミナーを実施)、それは「孤立無援」です。5年程前大阪・釜ヶ崎の夜回りで出会った若者は、地区の外れの道路脇のガードレールで、段ボールに身を屈めて寝ていました。着ていた衣服はまだ新しく、数日前に来た様子でした。釜ヶ崎にも入れぬ一人ぼっちの「新参者」、彼の顔と不安げな表情は今でも覚えています。切り捨てられていく命、それは“隣にある貧困”です。

●暴力に抗う魂に、連帯する

 「ポリオが流行しているパキスタンで、政府が進めるワクチンの無料接種が、イスラム武装勢力の攻撃目標になっている。武装勢力は取り組みを『米国のスパイ活動』と批判。AFP通信によると、この2か月間に、予防接種に携わる19人が攻撃を受けて死亡した」(朝日 2013.2.6)

 教会や学校、そして病院までがテロの標的になるのは、世も末、まさに「末期」です。この子どもの命を救うためのポリオ根絶運動に対する暴力行為も、同類です。教会は癒されるべき魂の、学校は子どもたちの未来の、病院は傷ついた命の、救済に不可欠な存在。その破壊は、自壊を招く行為に他なりません。

 「『女性にも教育を』と訴え、武装集団に襲われたパキスタンのマララ・ユスフザイさん(15)が、肉声のコメントを出すまでに回復した。銃撃から4か月。砕けた頭蓋骨の穴はチタンの板で覆われ、耳
には聴力を取り戻す器具が埋め込まれた。心にも鉄の衣を着せ、命がけで闘う決意とみえる。生死の境をさまよって、なお『神に授かった新たな命は、人助けに捧げたい』と気丈に語る姿は胸を打つ。ノーベル平和賞の候補とされるのも道理だろう」(朝日 2013.2.8)

 一発の凶弾は、いとも簡単に人命を奪います。しかし暴力に抗う魂は、奪えません。連帯する魂をも、です。

●「1秒の世界」(責任編集 山本良一・Think the Earth Project編/ダイヤモンド社 2003)より

 “1秒間”に ⇒以下は、60項目の内の7項目。・・・(  )のカッコ内は、大江の補足コメントです。
  ※本書の発刊は10年前。最新データではないものの、私たちを取り巻く刻々の変化を示しています。
 自然災害に対して、65万円の保険料が支払われています・・・(総額は、天文学的な数字です)
 小腸で、170万個の細胞が生まれ変わり・・・(60兆個の細胞の集合体である人体は常に内部変化を)
 320万円の軍事費が使われ・・・(世界の武器輸出入総額は、年間153億ドルでした)
 79個の星が爆発して、その生涯を終え・・・(1250億個の銀河が存在する宇宙は、生きています)
 0.3人、4秒に一人が飢えによって命を落とし・・・(1分に17人が餓死。2002年世界食糧サミットより)
 5歳以下の子ども48人が汚染された水や食料で下痢になり・・・(毎年15億人以上の子どもが下痢に)
 人口が2.4人増えています・・・(当初予想より2年早く、地球は人口70億人の時代に突入しました)

 地球は、瞬時の変化と共に生き続けています。私たちは、変化に直接間接繋がって生きています。また約60兆個の細胞が示すように、私たちは、内部変化を起こしながら「日々」生まれ変わってもいます。1日=86,400秒です。“一日生きる”―それ自体が「奇跡」です。一日一日を大切にし、自分と同じように隣人を愛したいと思います。1秒1秒が繋がって、1分・1時間・1日、1か月・1年へ・・・。  「時」は一瞬の連続です。「時」は非情でもあります。4秒に一人、世界のどこかで子どもが亡くなり、60秒に一人、女性が出産時に命を落とす・・・。
 「時」は、刻まれ・流れるだけでなく、意味を持ちます。そして静かに色づき、味わい深く、平和の香りを放ちます。私たちが目覚めた時に。祈った時に。最後は、「1秒の世界」に、ちょっぴり詩的な想いを巡らせました。