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13年度総主事通信 ①<No.73>

2013.05.24

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今月のコメント

「エマオへの道」(東日本大震災から2年~被災者支援センター・エマオ活動報告 2013.3.11)

 「この2年間は瞬く間に過ぎていきました。しかし、思い起こそうとすると、重い扉を開くようにぎこちないものになります。東日本大震災は多くのものを破壊し、奪い、傷を残しています。震災は圧倒的で途方に暮れるばかりでした。見ること、聞くこと、その悲惨のすべてが経験と理解を超えていました。
 被災者支援センターが与えられたのも、思いを超えた出来事でした。・・・直後から自らの危険を顧みず、多くの人々が駆けつけてくださったのです。
 ・・・(ボランティア・スタッフ・支援者は)『エマオ』のジグソーパズルに欠かせないピースです。どのピースも大きさに、位置に、形に違いがありながら、一つの絵を写していきます。『エマオ』はエマオの町へと向かう道の途上で主の十字架の死に落胆した弟子たちに主ご自身が近づいて行かれた場面です。悲しみの途上において主が近づく絵姿です。・・・皆の思いの中心にあった復興、痛み傷ついたところに主にあって真の回復が与えられることを祈ります」(高橋 和人・東北教区総会議長、「エマオへの道」より)

“ピース(Piece)”は、“ピース(Peace)”です。炎暑でも、厳冬下でも、被災地の現場で黙々と働くボランティアやスタッフ、そして支援者たち。一つひとつがかけがえのない“ピース”です。時に疲れ果て、途方に暮れ、深く傷つきながらも、被災者と悲しみや喜びを共にしようとする姿は、小さなHOPEでもあります。

「中国人看護師が急増~NPOが病院紹介」(朝日 2013.5.21)~多文化共生に向けて

 厚労省の調査によれば、2011年時点で、全国の医療機関で約154万1千人の看護職員が必要なところ、約149万5600人に留まり、約4万5千人が不足しています。

 「・・・中国を中心に少なくとも217人の外国人の若者が日本の看護師国家試験に合格し、民間の病院で働いていることが朝日新聞の調査でわかった。深刻な看護師不足を背景に、国内のNPO法人が中国の大学などと病院側の橋渡し役になり、3年ほど前から急増。経済連携協定(EPA)で来日したインドネシア・フィリピン人看護師(96人)の2倍を超えた・・・国籍別では、中国183人、ベトナム30人、韓国4人。勤務先の病院は、大半が首都圏か関西だ」(同上)

 EPA枠によって08年から今春までにインドネシアとフィリピンから629人が来日しましたが、合格率は10%前後と低迷。一方、今回の報道のように、NPOが仲介する形で、中国などから来日した人たち国家試験の合格率は70~90%で、日本人に迫る、とのことです。もちろん制度自体も異なり、単純比較はできないでしょうが、この報道は、改めてEPA枠の問題点を浮き彫りにし、医療現場での新しい試みが民間主体に始まっていることを示します。「厚生労働省看護課は中国人看護師が増えていることについて、『良いとも悪いともいえない。・・・実態調査は考えていない』としている」(同上)そうです、、、。

 さて看護ではなく、介護ではどうでしょう?隣国・台湾の例です。「台湾 住み込み介護19万人~インドネシアから続々」(朝日 2013.5.10)。一方、EPA枠で来日した人は計933人、うち合格者は164人(合格率は40%)。桁違いの数値です。これも単純比較はできません。しかしある問題提起がそこにあります。

 少子高齢化と多文化共生という、日本社会の未来を左右する大きな時代のうねりが、目前に迫っています。この国はどこへ?日本はいつ、門戸を開き、「鎖国状態」から脱するのでしょうか?

「子どもの貧困対策法」~子どもの“生きる権利”

 「もし成立すれば、『貧困』という言葉を冠する初めての法律になる。・・・『あってはならない状態にある子どもたち』の存在を日本社会が認め、国が政策課題として位置づけるからだ。『子どもの貧困対策法』(仮称)の制定に向け、政治の動きが大詰めを迎えている。・・・相対的貧困率は民主党政権時代の09年に初めて公表された。子どもの場合、最新の数値は15.7%。7人に1人が貧困となり、先進国の中では高い部類に入る。1人親に限ると5割強で、先進国で最悪水準だ。・・・貧困の連鎖、固定化は、社会の安定を失わせる」(朝日 2013.5.18)

 貧困の形は様々ですが、多くは「欠乏」に起因します。生存のための必要最低限の資源の欠乏、それは一般的な貧困のイメージでしょう。けれど、機会や選択肢の欠乏もあります。日本の子どもは、「将来の夢は?」と問われて、「生きていること」とは答えないかもしれないし、平和への脅威は隣り合わせではないかもしれない。けれど記事が示す「相対的貧困率」は子どもと家族を取り巻く現実です、親の貧困や孤立や「関係性の貧困」がもたらす虐待や負の連鎖などの問題は、アベノミクスの陰に隠れて見えません。

 前月の通信で、賀川豊彦の「子どもの権利(6項目)」(1924)のことに触れましたが、賀川はその3年後に改訂版「子どもの権利(9項目)」を提唱しました。「・・・また1927年には、『生きる』、『食う』、『眠る』、『遊ぶ』、『指導してもらう』、『教育を受ける』、『虐待されない』、『親を選ぶ』、『人格としての処遇を受ける』という9つの権利を主張しています」(牧田稔著「ほいくの窓」、2013)。子どもには、“生きる権利”があります。

 JOCSは、今、原発事故の影響下にある福島の児童養護施設の子ども達を支援しています。彼らの背景に、関係性の貧困や虐待、病気や障がいという切実な問題を知り、日本社会の実像を見ています。