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08年度総主事通信③

2008.07.02

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今月のコメント

●児童労働反対世界デイ(6月12日)―子どもたちからのSOS!!

 世界約2億4600万人の子ども達(5-17歳)が労働を余儀なくされており、危険で有害な労働を強いられている子どもは約1億7000万人、最悪の形態の労働(一つは性的搾取)はうち840万人に上ります(ILO統計より)。
 
 「売春目的の人身売買が横行するインドで、売春を強制する10代の少女たちの体の成熟を早めるため、売春組織が女性ホルモン剤を投与している実態が明らかになった。過剰な投与が心身に与える影響が心配されている・・・。インドでは、国内や隣国のネパール・バングラデシュの貧しい家庭から、売春目的で10歳前半の少女が売られる事例が後を絶たない。売春を強要される18歳未満の女性が30万人に上る、との統計もある。」(朝日新聞 2008年6月21日)

 この記事の舞台になっているインド・ムンバイのレッドライトゾーン(いわゆる売買春地域)を2度フィールドワークで訪れたことがあります。巨大な性産業コミュニティ。厚い化粧をしながら、少女達は日が暮れると同時にあちこちに立って、自分を買う「客」を待ちます。多くがネパールやバングラデシュから送られてくる子ども達。そのネパール・バングラデシュはJOCSの活動地です。今この瞬間にも子ども達が危機に晒されているのです。
 児童労働反対世界ディに「児童労働と教育に関する南アジア会議(ニューデリー)」が開催され、パキスタン・ネパール・スリランカ・インドのかつて児童労働をしていた子ども達も参加しました。「まず子どもを!」です。

●「なぜ私だけが苦しむのか-現代のヨブ記」(H.S.クシュナー著:岩波現代文庫)

 「幼い息子が奇病にかかり、あと10余年の命と宣言されるー理不尽と思える不幸に見舞われたラビ(ユダヤ教の教師)が絶望の淵で問う。神とは、人生とは、苦悩とは、祈りとは・・・。」
 「世界ではじつに沢山の人びとが心の痛みを抱きながら日々を生きているだけでなく、そのほとんどの人びとの心の痛みに対して伝統的な宗教はあまり役に立っていない」

 この本は、岩本ワーカーの派遣祝福式の際に小島会長から、またリトリートの際に植松さんから紹介されました。不条理に満ちたこの世界と日常。それぞれの人生を襲う様々な不幸な出来事に、「神様の戒めとして受け止め、試練を乗り越えて」と励ましたりすることの多い私達。けれど、当事者の苦しみは計り知れません。
 あの阪神大震災の時にも、「これは神様のご計画に違いない。前に向きに、この苦難を乗り越えるのだ。」という激励の言葉をよく聞きました。けれど、納得はいきませんでした。かけがえのない人との死別・喪失体験は絶望以外のなにものでもありません。その悲劇は、癒されることの無い記憶を「瞬間冷凍」します。私達は何故生きるのか、何故死ぬのか、そしてそれでもなお神を信じることの意味は?とこの本は解き明かしています。
 ミャンマー・中国を襲った未曾有の大災害でも多くの人々の命が奪われ、苦しみの只中にあります。「なぜ、私(たち)だけが苦しむのか?」という憤りの声。しかし無情にもミャンマー・中国の報道は早、消えつつあります。

●再び、「世界を不幸にするアメリカの戦争経済」(ジョセフ・E・スティグリッツ、リンダ・ビルムズ著 徳間書店)

 「アメリカに課される財政的及び経済的コストの総額は約3兆ドルに達し、他の国々に課されるコストを合わせれば、おそらくその数字の2倍になるだろう。」

 「1兆ドルあれば、さらに800万戸の住宅を建設できたかもしれない。1年間にあと1500万人の公立学校教師を採用できたかもしれない。1億2000万人の子どもを1年間の就学援助プログラムに参加させられたかもしれない。あるいは5億3000万人の子どもを1年間健康保険に入れるか、4300万人の学生を奨学金で4年間公立大学に通わせることが出来たかもしれない。これらの数字を3倍にしてみてほしい。」(同書より)

 言うまでもなく、戦費は生産的な支出ではなく、破壊のために使われます。未来をも奪います。もしイラク戦費3兆ドルが他の目的や機会に使われていたら、一体どうなったでしょう?戦争の経済ではなく「平和の経済」が、不幸の経済ではなく「幸福の経済」がもっと研究され実践されることを祈っております。
 繰り返しになりますが、JOCSの働きは、「平和」というインフラがなければ成し得ません。ヨハン・ガルトゥング博士は「積極的な平和」を提唱しました。しかし、たとえ「消極的な平和」(紛争や対立の無い状況)であったとしても、JOCSの活動には、それは必須の条件なのです。