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総主事通信07年度⑥今月のコメント

2007.10.09

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●9.11
 戦慄と恐怖のあの瞬間、世の崩壊を予感させ不機嫌で苛立ちに満ちた世界に変えた6年前の9.11。「テロ」という名の戦争の連鎖は暴走列車のように歯止めが利きません。けれど、一方では9.11の記憶すら薄れつつあるという皮肉な現実。私は、2002年9月にペシャワール(パキスタン)からトライバルエリア(治外法権状態にある部族支配地域)と国境を越え、1979年のソ連・アフガニスタン戦争や激しい内戦の爆撃のためすさまじい悪路となり、左右に地雷原の広がる陸路を通ってカブール(アフガニスタン)へ着きました。爆弾テロが頻発する首都カブールはまさに修羅場。破壊しつくされていたのは建物ばかりではなく、人々の心と暮らし、そして希望でした。
 その後、アフガニスタンの山岳地帯(あのペシャワール会が活動するデライヌール郡など)にも立ち寄り、9月11日にはペシャワールのアフガニスタン難民キャンプに戻りました。CNN(難民キャンプに近いゲストハウスに衛星TVがありました)のニュースで流された9.11のメモリアル放映が延々と続いていました。報復攻撃をしかけた米国、報復される側となったアフガニスタン。アフガニスタン難民居住区で見たその映像に対する「奇妙な感覚」は今も忘れられません。

●<9.11 もう一つの悲劇>-地球上の、途上国の、ある一日、ある9月11日
 •犠牲者数:36,615人
 •場所:世界の貧困国
 •この悲劇に関するテレビの特別番組:なし
 •新聞報道:なし
 •各国の国家元首からのメッセージ:なし
 •この危機に対する組織による説明:なし
 •連帯メッセージ:なし
 •黙祷:なし
 •犠牲者への追悼:なし
 •特別なフォーラムの呼びかけ:なし
 •法王からのメッセージ:なし
 •株価の変動:なし
 •非常事態警報:なし
 •軍隊の動員:なし
 •報道関係による、この犯人についての推測:なし
 •この犯罪についての責任者と考えられる者:世界的な資本家階級
“ A-info News Service”より、月刊「希望の種子」22号、プルトニウム・アクション・ヒロシマ、2002年10月

●ニューズウィーク 2007年10月3日号 Perspectives から
「何人かの罪のない人々の命が失われたらしい」

 ブッシュ米大統領―民間警備会社ブラックウォーターUSAの警備員がバグダッドで銃撃事件を起こし、少なくとも11人のイラク市民が死亡したことについて

どこかの、誰かの命は余りにも軽い?・・・

「ポル・ポト派が世界に注目されるいい機会になると父は喜んでいる」

 1970年代にカンボジアで大虐殺を行ったポル・ポト政権のヌオン・チア元人民代表議会議長の息子、ヌオン・セイ―人道に対する罪で9月19日にカンボジア当局に身柄を拘束された父親について
 旧政権時代の自国民虐殺の罪などを裁くための特別法廷(国連の協力により設立)は今もまだ開かれぬまま(08年春に審議開始の予定)。30年近い年月がたちながらも、その記憶は封印されたまま。

 奪われ、消された命は無きに等しい?・・・

●特集“マザーテレサの子どもたち”(朝日新聞・夕刊から)
 「インド東部のコルコタ(カルカッタ)にある『死を待つ人の家』。『神と貧しき人を愛し、喜びを分かちなさい。』-マザーの言葉が壁に書かれていた。年老いた人力車夫。出稼ぎの元農民。ずらりと並ぶ約100床の簡易ベッドには治療薬が払えず病院に入れない患者が横たわっている。手足の先のない人が手当てを受ける様子は、野戦病院のようだ。―中略―日本人の若者たちはここで、ボランティアとして働いている。夏休み期間の8月は連日、20人前後が汗を流した。―中略―『自分が幸せならいいと思って生きてきた。でもマザーの施設で働き、人の幸せを手伝うことから始まる幸せもあるのかと思った』と岩本さん。―中略―録数を見ると、日本人は昨年9月から1年で1300人以上。キリスト教徒が多い米・韓・スペインなどを抜いて世界最多というから驚きだ。」(朝日新聞<夕>2007年9月8日(土))

 マザーが神様の御許に戻られて今年で、はや10年。大勢の日本人の若者たちが、マザーハウスに心惹かれ向かいます。「生きるための何か、大切な何か」を求めて。多くは自分探しかもしれません。でも、それらの中に一人ひとりがある種のショックと挫折や無力感にさいなまれつつも、世界各地の身近な「コルカタ(カルカッタ)」に目を向け、隣人と共に生きることに目覚めれば、やがて無関心と憎しみと対立にピリオドを打つときが来るに違いありません。その希望に賭けたい、と思います。