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08年度総主事通信⑧

2008.12.04

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今月のコメント

●世界子供白書2008「子どもの生存(Child Survival)」
 「命はどれほどの価値があるのだろうか?・・・最新のデータによると、毎年400万人の赤ん坊が出生1ヶ月以内に命を失い、うち半数が最初の24時間以内に命を失っている。出生1ヶ月までの時点よりも最初の1日で命を落とす確立が約500倍も高いのである。新生児の死亡は、5歳未満児の死亡総数のほぼ40%を占め、乳児(1歳未満)の死亡数の60%を占めている。・・・これらの死亡に共通する要因は母親の健康状態である。毎年50万人以上が出産中に、あるいは妊娠中の合併症のために命を落としている。」(同白書2008より)

 生後24時間以内、名前すら与えられぬうちに神様の御許に帰る無垢な赤ちゃん。幼い命を育みながらも自らの命を落とすお母さん。子どもの生存・母親の生存が私たちにとってかけがえのないことであることは言うまでもありません。しかしそうした尊い命が蔑ろにされていることに深い憤りと痛みを覚えます。私たちは試されています。

 「これらの最も小さい者のひとりにしたのは、即ちわたしにしたのである」マタイ25章40節)

 世界各地で、今この瞬間にも最も小さい者の命と向き合って、尽力されている人々に祝福がありますように。

●12月1日は世界エイズデー ★HIV/AIDS最新事情(2007年末現在)―UNAIDS/WHOより
 12月1日は、世界エイズデーです。「HIV感染者数は、全世界約3,320万人で、新規感染250万人・死亡者210万人。毎日6,800人がHIVに新たに感染し、5,700人がエイズにより死亡している」(2007年末のデータ)。日本では2007年末で、「HIV新規感染が1,082件、AIDS患者418件、合わせて約1,500件と増加し続けている」(H191エイズ発生動向概要・厚労省エイズ動向委員会)。

 JOCS会報の「みんなで生きる」の今年の子ども号(11月号)の特集は「HIV/エイズを正しく知ろう」でした。北川恵以子元ウガンダワーカー(小児科医)による実践に裏打ちされた大変分かりやすい記事でした。 
 ★JOCSは2006年にDVD「エイズと向き合う~JOCS派遣医師北川恵以子 ウガンダからの報告」を
  製作。
 北川さんは記事の最後で、私たちの身近な事柄にも結び付けて「命の大切さ」を訴え、そしてエイズ発症によりあとどれぐらい生きられるかわからない子どもたちの「内面から命の喜びのあふれ出す、見るものを勇気付けてくれるような笑顔」を写真で紹介しています。

 12月1日は、365日のうちのある一日です。その日その時を生きながら、HIV/AIDSと共に生きる人(People with AIDS)の生の営みは連続しています。毎日がエイズデーです。UNAIDS/WHOの統計は「静止した」数ではなく、今も変化し、「動いている」数字です。先進国の中で唯一感染率が増加傾向にある日本。エイズの問題は遠いどこかの国の話ではなく、身近にある私たちの問題です。私たちはこのことを、広げればグローバル・イシューとして、掘り下げればパーソナル・イシュー即ち「生きることの尊厳」の問題として見つめたいと思います。
 もう一つ大切なことは、エイズのことだけではなく、結核・マラリア・ハンセン病など、貧困と密接に関わる多様な感染症にも目を向けなければならない、ということです。センセーショナルにエイズ撲滅が叫ばれる陰で、「見えない事実」があります。結核は年間約900万人が発症し、約170万人が死亡。マラリアの年間罹患者数は3-5億、150~270万人が死亡しているという統計です。人間は「数字」ではありません。その数字が浮き彫りにする現実と真実をしっかり読み取りたいと思います。

●「この国はがんにかかっている」(筑紫哲也さん往く)
「どこかで平和が脅かされれば飛んでいき、どこかで民主主義が危うくなれば『多事争論』で訴える。がんが骨に及んでも、反骨は揺るがなかった。『この国はがんにかかっている』。ネット上の『多事争論』で言った」(朝日・夕刊:2008年11月14日)―筑紫哲也さんが11月7日に73歳で天に召されました。

 筑紫さんは最後の「Web 多事争論」で、かく語りました。
 「人間はがんに侵されると、がんと闘うために、本来使うべき栄養やエネルギーが奪われていく。今『この国はがんにかかっている』状態である。」と。

 本当に優先されるべきことにお金を使わず、未来にも過去にも投資できないでいる。一体何を大切にし、価値を置いているのか分からない、という「このくにのゆくえ」を憂えるメッセージでした。最後の声を振り絞り出すような渾身の言葉でした。それは「平和」は待ち望むだけではなく、信念を貫き(キリスト者であれば信仰に基づき、という表現になります)、闘いながら自らつくり出していくものだ、という骨太な生き様とも受け止めました。
かの国では「変革」を掲げた新しい大統領の誕生間近です。その「変革」の行方はまだまだ未知数ですが、未来に託す市民の大きなうねりがひしひしと伝わります。心が揺さぶられ、心を動かされ、心を躍らせるような人が求められていたことの表れです。停滞し迷走するどこかの国とセイジは違って、、。

 しかし「私たちは落胆しない。」(コリント第2:第4章16節)でいきたいと思います。「艱難は忍耐を生み出し、忍耐は練達を生み出し、練達は希望を生み出す」(ローマ:第5章3―4節)からです。新年を迎えるに当たって。