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08年度総主事通信⑨

2009.01.06

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<2009年 新年のご挨拶>

新年明けましておめでとうございます。旧年中は、皆様のご理解ご協力深く感謝申し上げます。

 昨年11月下旬のバンコク国際空港に出された非常事態宣言以降、タイ情勢はいまだ先行き不透明です。次いで発生したインド・ムンバイの同時多発テロ以降、印パ関係が悪化。クリスマス直後のイスラエルのパレスチナ・ガザ地区への大規模空爆を契機に中東戦争勃発の可能性が高まっています。バングラデシュでは予定から2年遅れの総選挙により、やっと旧野党アワミ連盟圧勝でピリオドが打たれました。ジンバブエでは「インフレ年2億3100万%、パン1斤25億Zドル。1日で倍」(朝日08年12月31日)との報道あり。世界各地のニュースから目が離せません。とりわけアジア・アフリカ地域の情勢はJOCSの働きに少なからず影響が及びます。

 2008年を表す漢字は、「変」でした。文字通り、何か「変」、何かオカシイ。コメントをするまでもありませんが。確かに激「変」の1年でした。「変革」を掲げたオバマ次期大統領が選ばれました。日本の首相はまた「変」わりましたが、政治の混迷は変化なし。経済危機、突然「明日」を断たれ、野宿と孤独に凍える多くの人々。一寸先は闇、の状態が続きます。まさに試練の時、私たちは試されています。今一度「変」えるべきもの・「変」えざるべきものを見極め、そして変えるべきものを変える勇気・変えざるべきものを守る勇気、を持ちたいと思います。

 Newsweek(08.12.31-09.1.7新年合併号)-2009年世界を動かす注目のキーパーソン特集の表紙には残念ながら一人として「日本人」はいませんでした。「顔が無い・顔が見えない国」ということでしょう。これも敢えてコメントする必要がありません。けれど、それはそれとして、私たちは臆することなく、自らに与えられた使命を果たしていきたいと思います。無名であっても、小さくても。私たちを求めている人がいます。

 「平和を実現する人々は幸いである」(マタイ:5.9)は、JOCSの大切な聖句です。“平和を実現する”人々とは、私たちではなく貧しく小さくされた人々なのだ、その人々こそが「世の光」であり、主イエスに祝されている命なのだ、と気付かされた1年でした。「地の塩」としての私たちの働きを強めねばなりません。平和への小さな一歩。しっかり地を踏みしめながら、歩んでいきたいと思います。今年もどうぞよろしくお願い致します。皆様お一人おひとりにとって光に満ちたよい1年となりますように。今年もまたJOCSをどうぞよろしくお願いします。

<今月のコメント>

●“カタルーニャ民謡「鳥の歌」 ”by パブロ・カザルス 平和を貫いた音楽家

 1971年10月24日の国連の日に、20世紀最大のチェロ演奏家パブロ・カザルス(当時94歳)は、愛奏歌を奏でる際に、かく語りました。(カザルスは、その日「国際平和賞」を受賞)

 「私の生まれ故郷の美しい民謡を弾かせてもらいます。『鳥の歌』という曲です。カタルーニャの鳥たちは青い大空に飛び上がると、『ピース(Peace),ピース( Peace)』といって鳴くのです。」

 カザルスは、一生涯平和を貫いた音楽家でした。
 昨年8月にペシャワール会伊藤和也さんが凶弾に倒れた際、同会代表の中村哲氏は、「平和は、戦争以上の力である」と語りました。平和を貫くには確固たる意志と柔らかな力が必要です。何よりも信じることでしょう。
 ちなみに、世界の2007年度軍事費総額は約1兆3390億ドル(約140兆円)で、第1位の米国が全体の約45%を占め547億ドル、日本は43.6億ドルで世界5位(ストックホルム国際)平和研究所)です。その米国は、「貧困大国」と言われ、日本ではこの越冬できず凍死に震える人々がいます。「みんなで生きる」-今こそ!!

●国民総幸福量(Gross National Happiness/GNH) ブータン(2008年で建国100周年)

 ヒマラヤの秘境の国ブータンでは、1972年に若干16歳で即位した国王のもと、「国民総幸福量」、すなわち国民全体の幸福度を示す”尺度”という価値観が示されました。金銭的・物質的豊かさを目指すのではなく、精神的な豊かさ、つまり幸福を目指すべきだとする考えです。

 「多くのブータン人にとって、国民総幸福量はマーケティングの道具でもなければ、ユートピア哲学でもない。生きていくための具体的な構想なのだ。国民総幸福量の柱は、持続可能な開発、環境保護、文化の保全と振興、優れた統治の四つ。これらを指針としたことで、ブータンは天然資源の採取に頼ることなく、貧困から脱却することができた」(日経ビジネス 2008年3月28日)

 もちろんこれは容易なことではありません。幸福の追求は、たびたび岐路に立たされ、挫折もするでしょう。けれど100年に1度という経済危機にあって、今こそ「一体、私は何のために生き、誰と共に生きるのか?幸せとは何か、誰のためのものか?」を問い直すよい契機であると考えます。

●夢と希望への一歩、平和への一歩

 “I have a Dream.”-マーティン・ルーサー・キング牧師の歴史的なメッセージのキーワードは、言うまでもなく「夢」です。 “Dreams Come True.”-「夢」は叶うものです。今のこの世の状況からすれば、それこそ「夢」どころか「絵空事」と笑われるかもしれません。けれど、ワーカーとその同労者の無私の働きから「夢」につながる「希望」を見出します。パキスタンでクリスマスを迎え、自分が洗われるような体験からそのことを確信しました。
 聖ラファエル病院のシスターや看護師たちは世に知られた偉大な働き人ではないかもしれません。JOCSの現場でいえば、パキスタン以外でもカンボジアで、バングラデシュで、ネパールで、タンザニアで使命に忠実に生きる人たちがいます。もちろん世界各地でも。名と誉とは全く無関係なところで、身を低くして人に仕える人々に接すると、「この世は捨てたものじゃない」、と思えます。命を支えるボランティアは各地で今も献身的な働きをされています。神様の声に背中を押されて。

 「神と貧しき人を愛し、喜びを分かち合いなさい」(「死を待つ人の家」マザーテレサの言葉)

 現状を嘆くことから一歩先へ。未来をあきらめることからもう一歩先へ。夢と希望への小さな一歩、平和への小さな一歩を。一歩の先のゴールは、それこそ「月」のように遠いかもしれません。けれど、それはやはり一歩から、すべてが始まります。大切な何かが。