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08年度総主事通信⑪

2009.02.28

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今月のコメント

●JOCSチャリティ映画会-「出会い・つながり・支えあって生きる」ということ
 JOCSに奉職して3年目、第2回チャリティ映画会から関わらせて頂いています。第2回は中国映画「こころの湯」、第3回は韓国映画「おばあちゃんの家」、そして今回(第4回)は中国映画「變臉(へんめん)」でした。
 前回の「おばあちゃんの家」の主演の聴覚障がいを持つおばあちゃんは、映画出演はおろか、映画そのものさえ見たことがない素人さんでした。わがままな都会育ちの孫のすべてを受け入れ、温かく包み込むおばあちゃん(その山村に実際住む)。そのおばあちゃんは、「映画収録後、ストーリーを知らされて、涙した」と聞きました。
 今回の「變臉(へんめん)」の後も、あちこちから感動の言葉が寄せられています。大道芸人のおじいさんと「女の子であるが故に、7回も売られた」子どもがそれぞれの孤独を抱きながら、様々なことを乗り越えて生きる姿が、胸を打ちました。奇しくも「變臉」の主演のチャウ・シュイ氏(日中合作のTVドラマ「大地の子」に出演)は、「こころの湯」の主演をした名優でもあります。共演の子役は、現実に「同じような境遇を生きてきた」女の子だと伺いました。
 第2回目以降の共通点は(あくまで私見ですが)、「出会い・つながり・支えあって生きる」です。「こころの湯」(中国・北京に銭湯が!!)でも、久しぶりに帰郷した兄が、改めて知る父親の仕事への愛情と弟(知的障がい者)との出会いが描かれています。昨日のアカデミー賞授賞式では、邦画がダブル授賞をしました。映像は、国境を越えます。

●「壁と卵」-村上春樹氏:エルサレム賞・受賞講演スピーチ(2009年2月15日)からの引用(抜粋)

 「・・・私はここにやって参りました。遠く離れているより、ここに来ることを選びました。自分自身を見つめないことより、見つめることを選びました。皆さんに何も話さないより、話すことを選んだのです。

 『高くて、固い壁があり、それにぶつかって壊れる卵があるとしたら、私は常に卵側に立つ』ということです。

 そうなんです。その壁がいくら正しく、卵が正しくないとしても、私は卵サイドに立ちます。他の誰かが、何が正しく、正しくないかを決めることになるでしょう。おそらく時や歴史というものが。しかし、もしどのような理由であれ、壁側に立って作品を書く小説家がいたら、その作品にいかなる価値を見い出せるのでしょうか?
 この暗喩が何を意味するのでしょうか?いくつかの場合、それはあまりに単純で明白です。爆弾、戦車、ロケット弾、白リン弾は高い壁です。これらによって押しつぶされ、焼かれ、銃撃を受ける非武装の市民たちが卵です。これがこの暗喩の一つの解釈です。・・・」

 このメッセージに解説は不要でしょう。このメッセージはまだまだ続きます。言葉は私達一人ひとりに突きつけられた言葉でもあります。村上氏の授賞及び式への出席には多くの批判も寄せられました。しかし村上氏は、敢えて現地で直接「訴える」という選択をしました。苦渋の決断だったことでしょう。「声を上げる」(いつ・どこで、誰に対して・内を・どのように、が重要ですが)こと、そしてその勇気と重さについて改めて考えさせられた次第です。

●女性・女児に対する危機:UNFPA(国連人口基金)のHPより-その2

<60万人の女たちが、国境をこえて売られている>

 「現在、年間60万~80万の人々が国境をこえた人身売買の被害者となり、異国で強制労働させられていると言われています。大半が性産業に従事させられており、その80%が女性と女児です。未成年者の割合は、最大50%に上ると考えられています。世界で200万人もの子どもたちが、強制売春をさせられていることになります。
 これらは、国境をこえた人身売買についての数字です。国内の人身売買に関する数字は、もっと高いといわれていますが、はっきりしたことはわかっていません。
そして、こうした性的搾取を目的とする人身売買は、今日の地球で『もっとも成長著しい非合法ビジネス』なのです。『買う』人がいなければ、ビジネスは成り立ちません。日本とは、関係のない話でしょうか?」(UNFPAのHPより)

<6,000万人の女児が「消失」している>

 「開発途上国では、今でもジェンダーによる差別が根強く残っているところが多くあります。そのもっとも極端な例のひとつが、女児が『消失』していることではないでしょうか。現在、世界で毎年少なくとも6,000万人の女児が、出産前の性の選別、嬰児殺し、そして育児放棄のために姿を消すと考えられています。そのほとんどがアジアで起きています。生まれた赤ん坊が女の子だったら、いらない。そんな世界で、いいのでしょうか。」(同HPより)

 世界各地の女性と女児が、強固な「壁」に押しつぶされる、壊れやすい「卵」のような状況に置かれています。私達も常に卵サイドに立ちたいと思います。「『消失』されてしまう命」という隠された事実に激しい憤りを抱きながら。
 中国映画「變臉」(20世紀初頭という時代背景)で、男児偏重社会にあって排除される女児が描かれていました。21世紀の今もまだ世界各地で、そうした価値観や現実が色濃く残っていると思われます。見えにくい形で。「女性と子ども」を重点対象とするJOCS。私達に与えられた場とやり方で、地道に命の問題へ取り組んでいきたいと思います。