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10年度総主事通信①

2010.05.17

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今月のコメント

●ラインホルト・ニーバーの「心の静けさを求める祈り」(The Serenity Prayer)

 「・・・葛藤の中、夫は心身の調子を崩す。妻も追い込まれた。すべて崩壊しかねない危機を、米国の神学者ニーバーの一節に支えられたと、(宇宙飛行士の山崎)直子さんは自著に書く・・・。」(朝日2010.4.7)

 “O God, Give us, Serenity to accept what cannot be change, Courage to change what should be change, and Wisdom to distinguish the one from the other.”-Reinhold Niebuhr
 「神よ、私達にお与えください。変えられないものを受け入れる心の静けさを。変えるべきものを変える勇気を。そして、変えるべきものと変えられないものとを見分ける知恵を。」(桜の聖母学院 HPより)

 M.L.キング牧師を始め、多くの指導者たちに影響を与えた神学者ラインホルト・ニーバー(1892-1971)の有名な祈りです。色んな訳がありますが、この訳がしっくりきます。
 この祈りに、JOCSの半世紀を振り返り、なしえたこと・なしえなかったことを冷静に見極めたいと思います。なしえたことは小さく、なしたことの意味も問い直しが必要です。JOCSの在り様を考える時、「変えるべきものと変えられないもの」を見分けるため、真理を求め知恵を持ちたいと思います。大切なのは、「心の静けさ」だと教えられました。昨年12月のワーカーリトリート会議も、心の静けさを持つ機会でした。
 神様は50年もの間、JOCSをこの世に必要とされました。JOCSは、本来(その活動の必要性が)無くなるべき二律背反的存在です。しかしこの世は、様々な貧しさと欠乏にあふれ、命が大切にされない現実が横たわっています。JOCSは必要とされる状況が終わらぬ故にある、という「存在理由」ならぬ「理由存在」的な団体です。私達は小さくともその使命を果たすため、皆さまの祈りと知恵と力を必要としています。

●“むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく”~作家・故井上ひさし氏

 「・・・見えなくても確かにある希望に、井上さんは『素晴らしき人生』を見た。思えば、言葉とユーモアを操って井上さんが説いたのも、弱き者の希望だった。・・・」(日経 2010.4.13)
 井上ひさし氏が、映画に描かれた絶望と希望が紡ぐ物語に「素晴らしき人生」を見たのは、氏が選ぶラストムービー(最後の一本)である黒澤明監督の「素晴らしき日曜日」だったと書かれています。

 「・・・『日本語は主語を隠し、責任を曖昧にするのに都合が良い。その曖昧に紛れて多くの人が戦争責任から遁走した』と。日本語を様々な角度から見つめてやまない人だった。『むずかしいことをやさしく』と言い、さらに『やさしいことをふかく』と踏み込む。・・・」(朝日 2010.4.13)

 柔らかくしかし骨太に、平和のために惜しみなく人生を捧げた井上氏は今、天国から見つめています。不寛容に支配され、非平和が各地で進む今、その灯火を消すことなく受け継がねばなりません。与えられた日常のそれぞれの場で平和を創り出すことによって。そのために隣人(他者)に対する理解と受容が欠かせません。そして人と人とにある関係性の平和は、「やさしいことをふかく」から、築かれます。

●外国人看護師~「締め出し試験の愚かさ」(毎日 2010.4.15)

 「3人も合格したと言うべきか、たった3人だけ、と考えるべきなのか。・・・看護師や介護福祉士の受け入れについて日本の閉鎖性は際立っている。欧州では出身国で取った資格を認め合うという考え方が基本だ。日本はまったく認めない。・・・」(朝日 2010.4.9)

 「経済連携協定(EPA)に基づきインドネシアとフィリピンから来日している受験生が初めて看護師国家試験に合格した。ただし、わずか3人。両国の受験者は254人で、合格率は1.2%だ。一方、日本人の合格者は約9割に上る。外国人受験生にとっての壁は、難解な漢字や専門用語だ。本当に看護師の仕事に必要なのか。わざと締め出そうとしているようにしか思えない。・・・」(毎日2010.4.15)

 EPAでは看護師候補者は滞在期間の3年以内に日本語による国家試験に合格できなければ帰国しなければなりません。研修受け入れ先もままならぬ状況や幾重もの壁が立ちはだかり、受験者の99%が振るい落とされ、期限の3年がたてば強制的に帰国。不合格となった99%の人たちの明日はどうなるのでしょう?残された時間との闘いの毎日が待っています。まだ、日本は「鎖国状態」にあるのでしょうか、、、。

 2年前、AHI(アジア保健研修所)の招聘にてフィリピンの地域保健医療スタッフをゲストスピーカーとして勉強会を行った時のことです。勉強会の後、彼女は「途上国では医療過疎地が多い中、何故豊かな日本が我が国の医療従事者を奪うのか?」と私に問いました。答えに窮しました。今回EPAによって来日している254人も母国では将来有望な人材ばかりです。その大切な保健医療の担い手を母国から(結果的に)引き離し、そして国家試験不合格者として母国へ返す、という矛盾に、誠に、誠に忸怩たる思いがします。