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JOCS/東日本大震災 釜石への派遣報告(7月11日~14日)

2011.07.29

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JOCS/東日本大震災 釜石への派遣報告(7月11日~14日)

                           白石仁美(カウンセラー)

 7月11日~14日までJOCSからの派遣という形で、釜石ベース「心のケアチーム」
(カトリック仙台サポートセンター管轄、釜石教会)訪問。今後、毎月訪問する予定。

≪心のケアチーム≫

*傾聴
 釜石教会は1階が信徒会館、2階が御聖堂になっていて、1階に支援物資が置いてあり、
それを取りに来た人が、お茶やコーヒーを飲んでくつろげるような心のケアスペース「フ
ィリア」がある。
 毎朝9:00にオープンするのだが、開く前から、人々が来て並んで待って下さってい
る。必要な物資の供給のためだけでなく、避難所や仮設や自宅など様々なところから、集
まり談笑出来る、ほっとするスペースになっている。
 地域の人同士が話し合う光景の中で、折々に、私たち「心のケアチーム」に心を開いて、
個別に少し奥の静かなスペースでお話しを伺わせて頂くことがある。避難所では語れない、
震災直後の想像を絶する個々の体験、これからの不安、正直なストレスや希望などを話し
て下さる。
 話し終えると、また連れだって笑顔で帰って行かれる。その前向きに生きていこうとす
るお姿にひれ伏すような思いだ。

*アクリルたわし作り
 もう一つの取り組みが、クリエイテイブな創作活動だ。
 「アクリルたわし」(洗剤不要の毛糸で編んだ食器洗いのたわし)を、毛糸と編み針で、
ボランティアの先生に教えてもらいながら、編んでいく。全く初めての人も、寄り目にな
ったりぎこちない手つきで、周りにからかわれながら、編んで、作品を仕上げていく。経
験者は、私は得意よ・・と、私たちに別の編み方を教えて下さり、誇らしげだ。出来た作
品は、早速持ち帰り、役に立つ。手が不自由で編めない人のために、編んだのを差し上げ
ると喜ばれた。あそこに行くと、誰かに会える・・そんな、心がほっこりする小さなコミ
ュニティが出来つつあるようだ。私の方こそ、受け入れてもらっているのを感じる。

 5歳の男の子と積み木で遊んでいた時、「津波が来た・・って言って!」と言われてそう
いうと、積み木で作ったお家を壊した。屈託のない表情で、叱られて悲しかったのと同じ
ような、ひとつの現実として、その子の中に刻み込まれていることに、私の方が戸惑いを
覚える。

*避難所巡回
 夜、市民体育館の避難所を訪問する。段ボールを平面にしたものを、唯一の間仕切りに
して、50人くらいの人が日々の暮らしを、4か月もそこで営んでいる。全くプライバシ
イもないところでの生活を、突然に余儀なくされ、やり場のないストレスはいかばかりか
と、胸が痛む。
 缶ビールを結構飲んでいる様子が目につく。
肩もみをさせていただきながら、お話しを伺わせていただくと、ストレスをお酒やパチン
コで紛らわせる人も多く、避難所に来てから30万もパチンコにつぎ込んだ人もいるとい
う。その女性は、図書館から借りた絵本を見せて下さり、「これは、私が子どもの頃見てた
本なの・・流されてしまったけど。」と仰った。絵本を見たり、「心のケア・フィリア」に
足を運んで、気持ちを切り替えながら、就職のための面接を終えて連絡待ちだと仰った。
仮設入居も決まられ、「次回8月に私が訪問する時は、仮設住宅の方に来てほしい」と住所
を教えて下さり、お尋ねするお約束をした。

*「グリーフケア」講演会とテゼの祈り
 11日の月命日には、2時46分にサイレンが鳴り、黙祷する。
 その夜、「テゼの祈り」の集いで援助修道会のSr.山本の澄みきった歌声とオカリナの
響きに、深い祈りと心が洗われるような時間を過ごさせて頂いた。
 その後、上智大学グリーフケア研究所のSr.高木慶子が悲嘆にくれる人々の心の動き、
関わり方の注意すべきことなどを丁寧にお話し下さった。地元の方々も大勢参加され、御
聖堂が満席を超える盛況ぶりだった。

*近隣教会の活動との連帯
 近くにある「新生釜石教会」(日本キリスト教団)の赤テントは道路沿いにあり、暑い日
に中をのぞくと、「かき氷いかが?」と、冷たいものがさっと出てきた。JOCSの活動と
も、「カトリック釜石ベース」とも、連帯しながら、地域の人々に深く馴染んでおられる様
子が感じられた。クーラーボックスのカキ氷用の細かい氷は、地元のお魚屋さんがまだ再
開できないけれど、氷は沢山あるので・・と提供して下さったとのこと。
 教会が、共に手を携えて、この地域のために活動出来ていることに、心から拍手を送り
たい思いになった。
 12日の夜は、ジャズの生演奏と、焼き肉パーティがあった。地元の人たちが、生演奏
を楽しみにしておられた。

≪感想≫
 巨人の爪痕でえぐり取られたような釜石の町の様子、大槌町の、高台から見た町全体が
流されてしまった信じがたい光景を目にした時には、私は自分のキャパシティを越え、吐
きそうなほどの身体反応があった。過去も未来も、家も、家族も一瞬にして失くしてしま
われ、今尚そこにおられる方々を思うと、この私の日常が夢のような不思議な感じがする。
 JOCSからの派遣として、毎月行かせて頂く恵みに感謝して、たった一人の方のささ
やかな助けにでもなれればと願う。また、次のおひとり、次のおひとりと、イエス様と共
にその方に、たいせつに出会わせて頂きたいと思う。私が何もしなくても、その方たちが
前向きに立ち上がろうとする雄々しい姿に、こちらの方が胸を打たれ、いのちの底力に震
える。