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2013年度総主事通信 ⑦<No.79>

2013.12.05

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今月のコメント

● JOCS奨学生~HIV/AIDSと共に生きる人々のために働く(ウガンダ)

 JOCSは、冬期募金趣意書2013で、HIV/AIDSと共に生きる人々のために働くウガンダの奨学生のエピソードを取り上げています。HIV/AIDSの影響を受ける人々は、JOCSの重点対象の一つです。

 「若い女性たちを支えること、特に親を亡くしたり、望まぬ妊娠をしたりという理由で学校を中退した女性たちを支えることは、資金が不足しているなかで、多くのチャレンジが伴います。それでも私は、弱い立場におかれた人々、特にHIV/AIDSと共に生きる人々のために、これからも励んでいきたいと思っています」(アネット・ビンドゥさん/南ルウェンゾリ大司教区 青少年地域活動責任者)

  ビンドゥさんは、JOCSの奨学金で2年間、カウンセリングを勉強しました。HIV/AIDSは医療面に加えて心理ケアがとても重要です。当事者に加え家族や周囲の人々へのケアも。多くは孤立・無援だからです。

  ウガンダは、1970年代の暴君アミン大統領の独裁、続く80年代のムセベニ政権時代から2000年代になっても続いた激しい内戦と、その後遺症としての貧困とエイズに今も苦しんでいます。私は、2009年10月に同国を訪れ、医療の最前線で活動する現地スタッフたち(JOCS奨学生)に出会い、深い感銘を受けました。アフリカの医療現場は過酷です。途上国の医療の最前線は、貧困の最前線でもあります。

 JOCSは、2000年から2005年までウガンダに北川恵以子ワーカー(小児科医)を派遣しました。ウガンダの奨学生支援は、北川ワーカーが勤務したKiwoko病院の新生児集中治療室の設置のため、その時から始まりました。Kiwoko病院が位置するLuweeroという地域は、かつての内戦の激戦区で、私が訪れた時、成人病棟の2/3はHIV感染者であり、結核との合併症患者であると知りました。

 ビンドゥさんたちJOCS奨学生たちの献身的な働きに、心からエールを送りたいと思います。

 

● 今、世界では・・・~「国連が苦しむ『コレラゲート』」(Newsweek日本語版 2013.11.12)

 「中米ハイチはこれまで、想像し得る限りの人災と天災に苦しんできた。だが、コレラの発生は1世紀以上にわたって確認されていなかった。・・・そのハイチで2010年10月以降にコレラが流行し、これまでに8,300人以上が亡くなった。同年1月、ハイチ大地震に見舞われた直後に平和維持活動(PKO)部隊を派遣した国連がコレラ菌を持ち込んだと非難されている。・・・先月(10月)上旬にはコレラ犠牲者遺族が国連を相手取ってニューヨーク連邦地裁に集団提訴し、潘(事務総長)も被告の1人に挙げられた。しかし国連は責任を否定し、コレラ被害に対する賠償も拒否している。

 ・・・ハイチのコレラ禍を調査した複数の第三者機関は、報告書で『アジア南部、特にネパールのカトマンズ地域に見られるコレラ菌株に感染したネパールのPKO部隊が、MINUSTAH(国連ハイチ安定化ミッション)キャンプ近くの川を汚染した』と結論付けた。この菌がすぐさま広まり、65万人を超えるハイチ人が感染し、8,300人以上が死亡した・・・」(Newsweek 日本語版 2013.11.12より)

  遥か彼方の貧しい中米ハイチを襲った大地震とコレラという二次災害に、私たちのよく知るアジアのネパールが関係している可能性が、、、天を仰ぎ、“Oh my God”と叫びたい気分です。国連が訴えられるという前代未聞の「コレラゲート」の悲劇は、余り日本では話題になっていません。苦難にある人々が更に困窮する事態。世界で一体、何が起こっているか?目覚めていよと、私たちに呼びかける声が聞こえます。

 

● ハンナ・アーレント~“考えない”ことの罪

 ユダヤ人女性哲学者 ハンナ・アーレント。今、岩波ホールで映画「ハンナ・アーレント」が上映中です。

 「記録『イェルサレムのアイヒマン-悪の陳腐さについての報告』に一文がある。『自分の昇進にはおそろしく熱心だったということのほかに彼には何らの動機もなかったのだ』(大久保和郎訳)。出世のため命令をこなすだけの凡庸な男が犯した、ユダヤ人の強制収容所送りという大罪。・・・映画とアーレントが今の時代に問いかけてくる。あなたは何も考えず命令に従っていないか。そして、あなたは完全にあなた自身でありつづけているのか、と」(日経 2013.10.26)

 作家の高橋源一郎氏は、朝日新聞の「論壇時評」で、こう語っています。

 「アーレントは、アイヒマン裁判を傍聴し、彼の罪は『考えない』ことにあると結論付けた。・・・『考えない』ことこそが罪なのである。・・・わたしたちは、・・・そこになにか問題があることに薄々気づきながら、日々の暮らしに目を奪われ、それがどんな未来に繋がるのかを『考えない』でいたのではないだろうか。だとするなら、私たちもまた『凡庸な悪』の担い手のひとりかもしれないのだ。」(朝日 2013.11.28)

  特定秘密保護法案に対し、国際人権団体や米国NSCの元高官も警告しています。更にピレイ国連人権高等弁務官が、「日本国憲法が保障する情報アクセス、表現の自由を適切に守る措置がないまま法制化を急ぐべきではない」(12月2日)と強い懸念を示しました。この問題は、「人権」の問題でもあります。日本を始め世界が、秘密のベールに包まれ、事実・真実に対して目隠しされる社会に向かっています。

 考える人でありたい。「凡庸な悪」の担い手にならぬために。行動する人でありたい。そして祈る人でもありたい、と思います。私が、私であるために。暗闇の世界に、微かな光を取り戻すために。