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総主事通信コメント(①4月~⑦10月)です。

2006.11.10

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<8月のコメント>

世界のエイズ対策のコストは、年間80億ドルが必要と言われています。しかし、9000億~1兆ドルもの途方もないお金が、世界の紛争に費やされています。日本は、米国に次ぐ「世界第二の軍事大国」(英国・国際戦略研究所)だということはあまり知られていません。私たちが知らぬ気づかぬ中、愚かな戦いが際限なく繰り広げられ、暴力と憎悪の応酬に、私たちは間接的にではあれ、それらに加担していることになります。

世界は、今「より新しいより大きなより悲惨な災害や紛争」のニュースに耳目は集中します(それらは程なく忘却の彼方に消えていきますが)。しかしその一方、世界中の戦争や紛争の犠牲者を遥かに超える多くの人々がエイズによって死に至り、エイズ孤児(年間約1500万人)となっていきます。国連のデータ(WHO,UNAIDS)では、世界のHIV/AIDSの患者感染者は4000万人を上回っています。しかしその数値は「氷山の一角」かもしれません。医療にアクセスできない人々、存在しない子どもたちもたちが限りなく「存在」していますから。この問題の解決に対して、私たちに猶予はありません。

さて、ネパールレポート(別紙)にも書きましたが、ネパールでは王族にまつわるクーデターや恐怖政治に支配され、マオイストによるゲリラ活動など政情不安と血なまぐさい殺戮が続いていました。4月には「無血革命」が起き、その後国王が王政から民主化への移行を示したことにより、事態沈静化の様相を示していますが、予断は許されません。今も政府が機能しない「真空状態」のままです。事故でも事件であっても警察さえ駆けつけない無秩序な状態が続いているとのこと。私たちの滞在期間中も、人身事故にまつわる悲劇のニュースに接しました。

私たちは祈ることしかできないのでしょうか?JICAではまだ安全管理上、カトマンズ以外の地域へは外出禁止となっています。そうした中様々な困難にある楢戸ワーカーの活動へもよき働きを、と祈らざるを得ません。「希望」という灯火をかかげ、暴力と破壊が生み出す「さらなる貧困」から小さな命が守られる平和へ。ネパールのみならず、国別及び関連委員会にて、それぞれの国や地域のニーズに沿った「アジアの呼び声に応える」活動を目指して、共に考え知恵を絞っていきたいと思います。

5月のバングラデシュ、6月のカンボジア、そして今回のネパール。ワーカーの活動拠点への歴訪は、その国の息遣いとワーカー及び協力団体が直面する諸課題を皮膚感覚で知る良い機会でした。アジアの国々の「叫び」-SOSが、存在すら忘れ去られ、排除されている人々の“Save Our Ship(船)”ではなく、“Save Our Soul(魂)”であると受け止めたいと思います。来月はインドネシアのジャワ地震・津波の被災地へ行きます。既にニュースのも上らず、「過去になりつつあるかの地」。苦しむ人と共に苦しみ、泣く人と共に泣く。痛みを分かち合い寄り添う活動を心がけたいと思います。