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活動内容

タンザニア ママ・ナ・ムトトプロジェクト 活動進捗報告No.11 (2024年3月) ~質の高いケアを目指して~

2023年度のママ・ナ・ムトトプロジェクトでは、202223年の間に短期の集中研修やセミナーを受けたスタッフ(タンザニアでは“チャンピオン”と呼ばれています)が中心となって、主に新生児蘇生法のトレーニングを継続していました。その成果は、スタッフの技術向上によって新生児死亡数や死産数が減少しただけでなく、スタッフの仕事に対する意識やモチベーションが向上していること、スタッフ・患者さんとのコミュニケーションが円滑になってきていることにも現れています。

現在は、出産前の危険兆候の見分け方や、出産後のお母さんに対するケア、異常分娩での対応の仕方を学んでいます。年4回のスーパービジョンと呼ばれる巡回指導で外部から招聘された講師が各施設にあわせた指導をしています。

各施設から12名選抜されたチャンピオンは今後、自分が所属している施設で主体的に研修を継続して企画・実施していくためのトレーナーとして期待されています。各施設において、チャンピオン以外のスタッフに対しても知識や技術を伝えることで分娩期ケアの技術が標準化されて、質が向上し、周産期死亡率が減少することを目指していきます。

2024年度はさらにプロジェクトを1年延長して、チャンピオンに対する更なる強化育成研修に重点を置いて取り組んでいきます。

現在、聖ヨハネ・パウロ2世病院のチャンピオンの1人で、院内でのトレーニングをリードしているユスフ医師にお話を伺いました。

ユスフ・マクンガ医師(聖ヨハネ・パウロ2世病院)

Q1:さまざまな研修を通じて、あなたの病院ではどのような変化がありましたか?

セミナーや施設トレーニング、そして雨宮ワーカーの指導によって、分娩期のケアの技術が向上しました。具体的には、分娩中に胎児心拍の観察が適切にできるようになってから、早期に胎児の状態を把握して対応することで、分娩後の母子に起こりうる合併症が減ってきたように思います。分娩後に新生児の蘇生が必要なケースにおいても、効果的に、そして速やかに実施できるようになりました。スタッフが、さまざまなケースのプロトコール(定められている治療の規定や手順)を理解し、適切な分娩期の管理を実施できるようになったことは、大きな変化です。

研修の準備をするユスフ医師

またこれらの研修は、実際のケースを想定した“シナリオトレーニング”がメインになりますが、基本的にはチームで実施されます。このトレーニングを通じて、チームワークの大切さを学んだことはとても大きな成果だったと感じています。特に、異常分娩のケースでは、スタッフ間のチームワークと早期の医師への報告は必須であり、この部分はだいぶ改善されました。

現在スタッフは、自発的にトレーニングをおこない、定期的なシミュレーショントレーニングの実施にとても協力的です。このことは、トレーニングの計画をたて、トレーニングのファシリテーターとして研修をリードする者としては、とてもうれしい限りです。

 

Q2:地域や病院の母子保健の分野で、来年度および将来の目標や達成したいことは何でしょうか。

まずは、分娩期のケアにおいて、お母さんや新生児に対する効果的なケアを提供し続けていきたいです。そのためにこれまで学んだことを基に、早期に胎児や母体の状態を診断し、速やかな対応を通して、標準的な妊産婦ケアに努めていきたいと思います。また地域住民や、特に妊産婦に対して、妊婦健診の重要性を伝えていきたいです。安全なお産を迎えるためには、妊婦の状態を適切に観察して、危険な兆候にもすぐに気が付かなくてはなりません。それには定期的なフォローアップが必要です。そのためには、健康教育が必要と考えています。

分娩時のケアが改善されたことで、満足してくれる妊婦さんも増えてきました。今後も地域のお母さんたちが安心して出産を迎えられる病院となることを目指していきたいと思います。

 

皆さまのあたたかいご支援に感謝いたします。引き続き、お母さんと子どもの健康が守られますように、ご支援とお祈りをお願いいたします。