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HOME>活動内容>協働プロジェクト>タンザニア ママ・ナ・ムトトプロジェクト(母子保健)>タンザニア ママ・ナ・ムトトプロジェクト 活動終了報告(2025年4月)
2018年4月から開始した母と子の健康といのちをまもる活動「ママ・ナ・ムトトプロジェクト」は、2年の延長を経て、2025年3月に7年間の活動を終了しました。
タボラ大司教区保健事務所(以下、TAHO)傘下にある10の施設を受診する母と子が適切なケアを受けられるように、という目的で開始したプロジェクトは、特に分娩期のケアと新生児の蘇生に関して、保健医療従事者の技術向上が見られました。これまでの皆様のご支援とお祈り、そしてあたたかい励ましの言葉に支えられ、活動を続けることができました。
心からの感謝とともに、聖アンナ・ミッション病院とンダラ病院からの成果報告と、協力団体TAHO所長のアレックス神父からのメッセージをお届けいたします。
タボラ州の中心部にある聖アンナ・ミッション病院は、弓野綾元ワーカーを始めとしたワーカーの活動拠点となった病院です。ママ・ナ・ムトトプロジェクトでは、2022年、聖アンナ・ミッション病院を含む、分娩の多い3病院から将来指導的立場に立つ見込みのある看護師を選び、新生児蘇生法や分娩管理に関する第1回研修を実施しました。その後、聖アンナ・ミッション病院では、研修に参加した当時の看護部長を中心に、他の施設に先駆けて「ラーニングコーナー」と呼ばれる研修部屋を設置し、積極的に院内トレーニングを計画、実施しました。その姿勢は他の施設にとって良い手本となり、各施設での「ラーニングコーナー」の設置に大きな影響を与えました。
現在看護部長を務めるシスター・エピファニアから、これまでの取り組みと成果についてご報告します。
「新生児蘇生や分娩管理のトレーニングを継続的に実施した結果、母子保健スタッフの能力が着実に向上しました。これにより妊婦の受診数の増加がみられました。母子へのケアが改善された証といえます。スタッフは母子のケアに対して自信を持つようになり、出産時の緊急事態にもスタッフ同士が協力し合い、迅速に対応できるようになりました。
妊娠39週の臨月の妊婦が下腹部の痛みで来院したときのことです。陣痛を観察していたところ、翌朝破水があり、分娩が始まりました。無事に男の子を出産しましたが、赤ちゃんは呼吸をしていません。体を拭いて保温しながらすぐに蘇生を開始しました。すると、1分以内には産声をあげることができました。これは明らかにレーニングの成果です。今後もスタッフ全員が緊急時に迅速かつ適切な対応ができるように、トレーニングを継続していきます。またトレーニングや実践で明らかになった課題は、スタッフ間で議論し、改善に努めていきます。
私たちは皆様からのあたたかいお支えにとても励まされました。私たちができる最高のケアを母親と子どもたちに提供できるように、今後も力を注いていきます。」
分娩管理の集団トレーニングの様子
新生児蘇生の指導
CTGからのデータを使った判読研修
ンダラ病院は、タボラ中心部から車で約1時間の地域にある、TAHO傘下の医療施設の中で最も分娩数が多い病院です。宮尾陽一元短期ワーカーが活動した病院でもあります。
ママ・ナ・ムトトプロジェクトでは、分娩数が多い3つの病院に分娩監視装置(CTG)を導入しましたが、ンダラ病院はそのひとつです。分娩時に母親と胎児の健康状態を観察するためにCTGを使用することで、安全な出産をサポートすることが可能となります。
JOCSの元奨学生であり、現在はンダラ病院の責任者を務めるシスター・フロリダから取り組みと成果についてご報告します。
「CTGは分娩期の母親を観察する新しいアプローチであったため、導入当初、習得には時間がかかりました。タンザニアの医師や看護師の教育カリキュラムではこれまで学んだことがなかったからです。実際のところ、初めは導入に積極的ではありませんでした。しかし、胎児心拍や子宮収縮の状態をCTGのデータから正しく判読するトレーニングを受けたのち、出産時にCTGでのモニタリングをおこなったところ、高リスクの出産に適切に対応することができました。それまでは分娩の経過を正しく観察ができなかったために対応が遅れ、母子ともに助けられなかったこともありました。しかし、CTGの使い方とデータの判読方法を学び、良い結果を体験したことで、スタッフは自信を持ち、分娩時に適切かつ迅速な対応ができるようになりました。実際に、死産や早期新生児死亡の数も減少しました。
他の施設で胎児窮迫(お腹の赤ちゃんが苦しんでいる兆候)の疑いがあると診断された母親が来院したときのことです。CTGを装着して胎児心拍を観察したところ、心拍が弱まっていることが確認されました。母子ともに危険な状態であったため、すぐに帝王切開をおこないました。手術は成功し、無事に女の子が生まれました。出産後の検査で母子ともに元気な状態であることが確認できたとき、スタッフと母親は安堵しました。その後、合併症もなく、母親と女の子は術後4日で無事に退院することができました。
ママ・ナ・ムトトプロジェクトでは、技術の習得だけでなく、機器の適切な管理・保守についても学びました。今後も個人やグループでトレーニングを重ね、スタッフの能力強化を継続し、常に質の高いケアを提供できるように努めていきます。」
CTG(分娩監視装置)
新生児蘇生の実技演習
CTGトレーナー育成研修
最後にTAHO所長のアレックス神父から、プロジェクトの総括をしていただきました。
「聖アンナ・ミッション病院、ンダラ病院の成功事例をご紹介しましたが、この事例以外にも、そして他の施設からも多くの成功事例が報告されています。プロジェクトを通してスタッフが習得した技術は、確実に母子のいのちをまもるために用いられ、また、働くスタッフの人生を輝かせるものとなりました。
スタッフの能力が向上したことや指導者が育成されたことはプロジェクトの成果といえますが、私は何よりもスタッフの意識の変化がこのプロジェクトの大きな成果であると考えています。技術を習得したことが自信につながり、彼らの積極性や意欲の向上、他のスタッフと協力して取り組む姿勢がプロジェクトを通して養われました。
JOCSにつながる皆様のサポートに心から感謝いたします。また、このプロジェクトに関わったすべてのスタッフ、新生児蘇生法の研修やCTGを導入し、指導してくださった雨宮春子さん(元JOCS派遣ワーカー)にも深く感謝したします。プロジェクトの成果を今後も持続させることが、これからの私たちの目標です。これからも私たちの取り組みを見守り、応援をお願いします。」
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